リハビリテーション部/作業療法部門

作業療法部門

 私たち作業療法士は、病気や事故などにより心身に障がいを負った方々に対して、可能な限りの機能回復を目指し訓練を行います。また、障がいが残ってしまった場合には、残された機能を最大限に活用し、身辺動作の獲得や家事動作、仕事への復帰を目標に訓練を行うことで、より良い生活が送れるように支援します。

Q:作業療法の対象は?

 整形外科疾患では、手・肘の外傷や手術後(骨折・腱損傷等)、肩関節疾患(肩関節周囲炎・腱板損傷等)、脊椎圧迫骨折や脊椎疾患、人工関節手術後、大腿骨近位部骨折などを対象としています。
 また、脳神経外科疾患(脳血管疾患・脳腫瘍等)、内科疾患(神経筋疾患・心疾患・呼吸器疾患・廃用症候群等)、外科疾患(乳癌手術後)の方々も対象としています。

Q:作業療法士は何人?

 35名の作業療法士が整形チーム、他科急性期チーム、回復期リハチームの3つに分かれて専門的な治療を行っています。

Q:作業療法はどんなことをするの?

 病気やけがなどで全身管理を必要とする急性期から症状や状態に合わせた機能改善の援助と日常生活自立への支援を行います。さらに、二次的な機能低下がおこらないよう予防的に訓練を行います。回復期においては、日常生活関連動作や家事・仕事における具体的な動作能力の再獲得のために、身体機能に応じた動作練習や環境整備、自助具の適応等の手段を用いて早期社会復帰を支援します。

整形チーム

 手や腕の骨折、指の腱や神経の損傷をはじめとする外傷や、絞扼性神経障害(手根管症候群、肘部管症候群)、変形性関節症、炎症疾患などの上肢の疾患や脊椎疾患、下肢の骨折、人工関節術後の生活指導などのリハビリを行っています。チームの特徴はハンドセラピィ(手のリハビリテーション)を行っていることです。
ハンドセラピィとは患者さんにとっての「使える手(useful hand)」の獲得を目指し、種々活動を用いた作業療法や運動療法、生活や家事動作訓練指導、温熱や超音波を用いた物理療法、熱可塑性素材を用いた装具療法(スプリント療法)を行っております。スプリント療法は、組織の安静や保護を目的としたものや訓練を目的としたものなど、多くの種類があります。手外科医師の指示により作業療法士が採寸・採型をし、患者さんの手に合わせ作成しています。当院では術後早期よりハンドセラピィを行い、スムーズな職場復帰や家庭復帰を支援しています。

PIP関節拘縮矯正目的の動的スプリント例

長母指屈筋腱修復術後の動的スプリント例

他科チーム

 脳外科、外科、心臓血管外科、循環器内科、消化器内科、一般内科、泌尿器科、小児科などの様々な診療科のリハビリテーションに携わっています。
具体的な内容は下記をご参照ください。

ニューロリハビリテーション

 ニューロリハビリテーションとは神経科学(ニューロサイエンス)のエビデンスを応用したリハビリテーションを指します。近年の脳・神経科学の発展により、脳卒中などにより脳がダメージを受けても、集中的なリハビリにより脳機能の再編成が生じること(脳の可塑性)が分かっています。この脳の可塑性を効率的に誘導することで、動かしにくくなった手足の機能をできるだけ回復させ、その機能を日常生活に活かし、社会復帰を目指す概念や手続きがニューロリハビリテーションになります。
 当院では、効果が検証されているエビデンスレベルが高い方法を用いるために、日本だけでなく諸外国の脳卒中リハビリテーションのガイドラインで推奨されている方法を積極的に導入しています。
 以下に代表的なものを紹介します。

※詳細は健康コラム第50話「最新の脳・神経科学に基づくリハビリテーション」をご参照ください。

末梢神経電気刺激と課題志向型練習
 末梢神経電気刺激はIVESやMURO Solutionといった機器を用います。上下肢の機能改善を目的に実施します。従来から電気刺激法は行われてきましたが、手足を動かそうという運動意図の有無によらず筋肉を収縮させるものが一般的でした。近年では、手足を動かそうとした時に対象とする筋肉の動きを検知してその筋肉に電気を流すことで、意図した運動を実現してくれる随意運動介助型電気刺激装置が開発されています。
 当院でもこのような末梢神経電気刺激を併用した課題指向型練習などを行なっています。

MELTs(手指運動リハビリテーションシステム)
 当院は東北の施設で初めてMELTsを導入しました。
患者さんの運動糸がロボットの動きに連動します。
最近のロボットを用いて、手指のリハビリテーションを行っています。

末梢神経電磁刺激
 近年開発されたPathleaderという機械を導入しています。上下肢の機能改善を目的に実施しています。電気刺激と違い、電磁刺激は電極パッドを貼らずに実施可能であり、疼痛がなく刺激が可能です。パッドの貼り替え作業がなく、かつ衣服を着用したまま刺激ができるため、短時間で様々な刺激をすることが可能です。

ボツリヌス療法
 医師がボツリヌス療法で注射をする際に、超音波エコーを用いて筋の同定を行い施注のサポートを行います。
また、注射のタイミングを見極め、必要に応じて早期に施注することで、その後のリハビリを効率的に行えるよう取り組んでいます。
詳細は健康コラム第35話をご参照ください。

脳卒中による高次脳機能障害患者さんへの車運転に関する指導

脳卒中後、自動車運転再開を希望する患者さんにおいては、机上の検査を基に指導・支援をしています。

がんへの作業療法
 乳がん腫瘍摘出後の上肢機能の改善を目的とした作業療法を実施し、速やかな自宅退院と早期職場復帰に繋げています。
消化器がん患者さんに対しては、術前・術後の介入を行い、早期離床を図っています。
※詳細は健康コラム第45話「リンパ浮腫」をご参照ください。

呼吸器や循環器疾患への作業療法

 当院の作業療法士に3学会合同呼吸療法認定士が2名在籍し、医師の指示のもと呼吸リハビリテーションを実施しています。多職種と連携を取りながら、適切な運動負荷量や酸素濃度を設定します。安静時や運動時の酸素飽和度を適宜確認しながら、日常生活に関連する動作練習を実施します。また、退院時の酸素管理の方法や自主練習などの指導を行います。
 心臓リハビリテーションでは、急性心筋梗塞や心不全の患者さんの早期社会復帰や再発予防、更にはその後の生活の維持を目指して、患者教育・生活指導・運動療法などを行っています。

NICU及び外来での小児リハビリテーション

 リハビリテーション部では、NICU・GCUにて小児科医師の指示のもと、多職種と連携・協働し、NICU入院中から退院後もリハビリテーション(理学療法・作業療法・言語聴覚療法)を行っています。
 リハビリテーションの内容は、発達評価、ポジショニング、呼吸理学療法、哺乳評価・支援、家族指導など、赤ちゃん・ご家族に合わせてスタッフと連携しながら支援しています。
 退院後は、定期的に外来通院していただき、発達評価、療育支援などの発達フォローアップをしていきます。運動機能、生活能力、コミュニケーション能力向上のための支援、家庭療育指導を行っています。
 その他、外来にて他院から紹介を頂いた児についてもリハビリテーションを実施しています。

回復期チーム

 当院の回復期リハビリテーション病棟では、脳血管疾患、整形外科疾患、神経疾患、内部疾患、廃用症候群のリハビリテーションに携わっています。その中でも特に脳血管疾患の患者様が多くを占めており、回復期作業療法では急性期と連携を取り、上肢の運動麻痺に対し、重症度や回復状況に合わせた上肢訓練や日常生活動作の向上、在宅復帰を目指すための集中的なリハビリテーションを行います。

上肢機能訓練

 ※詳細は他科チーム「ニューロリハビリテーション」をご参照ください。

日常生活動作練習

 食事、整容、排泄、更衣、入浴などの基本的な生活動作の再獲得に向けて、個々の能力に合わせた訓練や工夫を行います。

 調理訓練や洗濯、掃除、買い物などの退院後の家庭内での役割を想定した訓練も患者様やご家族と相談し行います。

退院前訪問

 より安心して在宅復帰ができるように、必要な患者様に対してリハビリスタッフが同席し退院前訪問を行い、自宅環境のアドバイスや生活に必要な動作方法を一緒に検討します。

運転に関する指導

 運転再開を希望される患者様に対しては、医師の指示のもと、机上での評価を行い、必要な指導・支援を行います。

リハビリテーション部 理学療法部門 言語聴覚部門 歯科衛生士部門