健康コラム

#9 痔(じ)のおはなし

いぼ痔(痔核)について

肛門の病気で三大痔疾患といわれるのが、いぼ痔(内痔核・外痔核)、きれ痔(裂肛)、あな痔(痔ろう)です。これらのうち、最も多い疾患は、いぼ痔といわれる「痔核」です。肛門の内側(直腸側)にできたものを内痔核、外側(皮膚側)にできたものを外痔核といいます。日本国内の有病率の疫学的調査はありませんが、海外の疫学的研究では4.4%とされ、男女差はありませんでした。年齢的には45歳~65歳が最も多い結果でした。
痔核の原因としては、排便時のいきみや、繰り返す便秘や下痢など肛門に負担がかかることが考えられています。内痔核の症状は、出血、脱出、腫脹などですが、痛みはあまりありません。一方、外痔核の症状は痛みで、血のかたまり(血栓)が大きくなると激しく痛むことがあります。また違和感や異物感の訴えで来院される場合もあります。
治療は保存的療法と手術療法に分けられます。保存的療法は生活習慣の改善と薬物療法です。排便時のいきみや長時間の排便をさけ、便意があれば我慢せずに短時間で済ませることが大事です。米国の医療機関での調査で、トイレでスマホを使用している人は、そうでない人と比べると痔のリスクが46%増加するという結果がでました。トイレ内でスマホを利用する人はトイレで過ごす時間がついつい長くなっているようです。
痔核の予防としては、過度な飲酒を控えることや入浴なども効果があります。薬物療法には軟膏や坐剤などの外用薬と内服薬があり、炎症や痛み、出血を抑える成分などが配合されています。
このような保存的治療で改善しない場合に行われるのが手術療法です。内痔核に対し多く行われるのは、ALTA四段階注射療法(ジオン注)と痔核結紮切除術です。ALTA四段階注射療法は、肛門から内痔核に直接注射で薬液を注入し、痔核を硬化・萎縮させ、直腸内に固定させる方法です。切除する方法に比べて痛みが少ないこと、入院が短く済むこと(日帰り手術の場合あり)、切除術より費用が安いことが特徴です。ただし再発率は切除術と比べると高く、妊婦、授乳婦、腎不全で透析を受けている方には適応となりません。痔核結紮切除術は痔核に入ってくる血管を縛り、痔核を切除します。医療機関によって異なりますが、4~7日間の入院が必要です。創ができるために痛みを伴います。外痔核の場合は、薬物療法で血栓を小さくしますが、痛みが強い場合は小切開し血栓を取り除きます。

きれ痔(裂肛)について

 きれ痔は、肛門上皮に裂創や潰瘍が生じたもので、医学的には「裂肛」と言います。排便時のいきみや硬い便の通過、下痢の際に急激な圧がかかることで肛門上皮が損傷されて起こります。比較的女性に多く、20~50歳代に多くみられます。肛門の後方(時計の6時方向)、次いで前方(時計の12時方向)に多く、排便時に急にしみるような痛みがあり、トイレットペーパーに付着するような真っ赤な血がでるのが特徴です。病脳期間によって急性裂肛と慢性裂肛に分類され、急性裂肛の場合は保存的治療が中心で、便秘や下痢の予防や軟膏(外用薬)で治癒しますが、急性裂肛が何回も繰り返すと慢性化し、裂創部分が深くなって潰瘍ができると、肛門の内側に肛門ポリープができたり、肛門の外側に線維化した皮垂(いぼ)ができたりします。このような状態がすすむと創が瘢痕化し、肛門狭窄を来たすものがあります。肛門狭窄が強い場合には肛門を拡張する手術が必要となることがあります。

あな痔(痔ろう)について

あな痔は「痔ろう」といい、男性に多いのが特徴です。女性の2~5倍くらい男性に多いとされています。年齢別には約半数が30~40歳代にみられています。直腸と肛門の境界にある歯状線のくぼみ(肛門陰窩)から細菌が侵入し、粘膜下の肛門腺に感染して炎症が広がり、これが肛門周囲の皮下まで到達し膿がたまると肛門周囲膿瘍という状態になります。症状としては肛門周囲の腫れや痛み、発熱などです。肛門周囲膿瘍が自然に破れたり、切開により排膿すると症状は軽快します。しかしその後の治癒過程で瘢痕化してろう管と呼ばれる膿の通り道ができることがあり、肛門の周りの筋肉や粘膜の間、筋肉と筋肉の間に慢性的な感染巣をつくり、痔ろうとなります。肛門周囲膿瘍は痔ろうの前段階と考えられますが、肛門周囲膿瘍の切開排膿後に痔ろうへの移行率は30数%程度とされています。
痔ろうをそのまま放置してしまうと、瘻管の走行が複雑化したり、さらに長年(10年以上)経過すると、癌化してしまうことがあります。痔ろうがある場合には早めに治療しておくことが重要です。治療は主に手術です。痔ろうの走行や深さによって手術術式は異なりますが瘻管を開放する方法、瘻管を切除する方法、複数の瘻管をもった痔ろうにはひもを通して感染を除去する方法(Seton法)などがあります。

さいごに

 痔といっても症状は様々です。出血がある場合には、大腸がんとの鑑別の必要性があります。恥ずかしさもありなかなか診察を受けるのを迷うこともあるかと思いますが、気軽に相談してみてください。長年の悩みが一気に解決することも多いと思います。

引用文献
1 日本大腸肛門病学会,編:肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン2020年版.改訂第2版.南江堂
2 Chethan Ramprasad, et al. Smartphone use on the toilet and the risk of hemorrhoids. PloS one.2025;20(9);e0329983.pil:e0329983

解説:磯部 秀樹(いそべ ひでき)(副院長)

【資  格】

  • 日本外科学会〔外科専門医〕
  • 日本消化器外科学会〔消化器外科専門医・指導医・消化器がん外科治療認定医〕
  • 日本消化器病学会〔消化器病専門医〕
  • 日本がん治療認定医機構〔がん治療認定医〕
  • 日本外科感染症学会〔ICD〕
  • 日本臨床肛門病学会〔臨床肛門病認定医〕

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※ 所属・役職・資格等は公開当時のものです。異動・退職等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

掲載日:2026年01月07日