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健康コラム

第8話 胃がんついて

内科(消化器)  鈴木 恒治 医師
胃癌の現状

胃癌は、生活習慣の変化と医療(検診を含む)の進歩等により、世界的に罹患率、死亡率ともに年々低下傾向にある疾患です。しかし山形は常に罹患率が全国上位3番に入り、胃癌の多い県といえます。

胃癌の原因

胃癌は環境、遺伝などさまざまな要因が重なり発症する疾病で、ひとくちにはいえませんが、最近の研究から、ヘリコバクターピロリ菌感染が胃癌発症の大きな原因となることがわかってきました。ピロリ菌が若いときに胃に感染し、長年かけて、胃に慢性胃炎(萎縮性胃炎)を引き起こし、慢性胃炎から、胃癌が発生するという経路です。ピロリ菌は大半が幼少時に感染するとされ、残念ながら感染予防の方法はありません。(近年、除菌治療はさかんに行われています。)

食物で胃癌発生および予防と明らかに因果関係を証明されているものはいまのところあまりありませんが、食塩の過剰摂取は胃癌発生の危険を高めること、野菜・果物の摂取は胃癌発生の有力な予防因子であることはほぼ間違いないようです。そのほか、過剰なストレスおよび疲労などは免疫力を低下させ癌発生の要因のひとつとなります。

日本では食塩摂取の低下、衛生状態の改善に伴うヘリコバクターピロリ菌感染者の減少などによって胃癌罹患者が減少しているものと考えられます。

胃癌の症状・診断

胃早期癌ではほとんど症状はありません。進行癌になると、腹痛、食欲不振、黒色便などの症状がでてきます。もちろん予防ができれば一番いいのですが、今のところ完全に予防できる方法はありませんので、癌ができても早期発見を行うことが重要なポイントになります。早期発見できれば複数の治療法が選択できます。つまり、症状が出てからの受診では遅いということになります。ある年齢(癌年齢、50歳以上)に達したら症状がなくとも定期的に検査することが、手遅れの進行胃癌にならない唯一の方法となります。胃の検査は、主に検診などで行われる胃バリウム検査、と胃カメラ検査の2種類があります。早期胃癌の発見となると、最近の器械の進歩もあり胃カメラのほうが診断能が高くなります。高齢であり、ある程度進行した慢性胃炎(萎縮性胃炎)のある方は毎年定期的に胃カメラを受けられることをお勧めします。高齢の方でも、慢性胃炎のない方もいますが、慢性胃炎がない場合は胃癌発生の危険が慢性胃炎のある方よりもだいぶ低くなるので2年に一回程度の検査でいいと思われます。慢性胃炎の程度は、胃カメラ検査をした際、担当医師に積極的に聞いてみてください。

胃癌の治療

早期胃癌では内視鏡治療ないしは外科手術、進行癌では外科手術、転移のある進行癌では抗がん剤治療などが選択されることになります。

当科での胃癌発見件数(2004〜6年)

胃カメラ件数 早期胃癌 進行胃癌
2004年5〜12月 2480件 33件 28件
2005年1〜12月 4162件 45件 34件
2006年1〜10月 3094件 54件 35件

上の表に示すように、胃カメラの性能向上もあり、早期胃癌の発見割合が年々増加傾向にあります。このような背景もあり、当科では2004年より早期胃癌に対し、胃癌内視鏡的粘膜下層切開剥離術を導入し、積極的に治療を行っており、これまで79例に内視鏡治療を行い、経過観察できているものでは再発が1例と、良好な成果を挙げております。

胃カメラ検査は個人差はあるのですが、楽なものではありません。当科では、今年から直径が6mmほどの極細の経鼻内視鏡を導入しました。経口の内視鏡に比べ苦痛が少ないことが多いようです。ご希望の場合は外来でお尋ねください。

まとめ

胃癌にならないようバランスのよい薄味の食事を心がけ、疲れを溜めず、適度な運動を行い免疫力を高める生活習慣を作る。必要があれば(胃潰瘍など)ヘリコバクターピロリ菌の除菌治療を受ける。癌年齢に達したら定期的に胃カメラを受け病気の早期発見に努め、万が一胃癌ができても早期に治療を受ける。こういったことが、現状では胃癌で命を落とさない方法と思われます。

経鼻内視鏡に関して

胃カメラ検査は、個人差はあるのですが、「つらい、苦しい」とどちらかといえば敬遠される検査です。胃カメラの苦しさの原因は主に以下の原因が考えられます。

①舌根部にカメラが接触することにより嘔吐反射が誘発される 
②検査中、咽頭部の狭窄感により呼吸がしにくくなる 
③胃に空気が入りゲップが誘発される

これらが同時に起こり苦痛が生じると考えられます。 そこで近年開発されたのが、鼻から挿入する極細径 (5.5mm;通常の経口内視鏡は約 1.0cm)の経鼻内視鏡です。

当院でも2007年4月より導入しました。はじめてみると、患者さんの評判は上々のようです。心配される鼻の痛みもさほどないようです。経鼻内視鏡は胃内に空気を入れる面は経口内視鏡と同じなのですが、舌根部にはほとんど接触しないこと、細いため喉の狭窄感が軽くて済むことで検査を楽に感じさせるようです。経鼻内視鏡は、画像が経口内視鏡に比べわずかに落ちるため検査時間がやや長くなること、内視鏡治療ができない、など短所はあるのですが、多くの方に検診目的に定期的に(比較的楽に)胃カメラ検査を受けていただくという意味では、大変有用な手段と考えております。日々診療を行っていますと、まだまだ進行胃癌の状態で発見される患者さんが多くいらっしゃいます。胃カメラ検査は年々楽になってきております。検査時間はおおむね5分程度です。癌年齢に達したら、症状のないうちの定期的な胃カメラ検査をおすすめいたします。経鼻内視鏡をご希望の際は、内科外来でご相談ください。

鈴木 恒治 医師

昭和39年生まれ
出身地  山形県山形市
最終学歴 新潟大学 医学部卒業
職  歴 平成16年 済生会山形済生病院入職
資  格 日本消化器内視鏡学会 専門医
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