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人工股関節全置換術について

はじめに

当院は開設時より股関節診療に力を入れており、現在人工股関節の手術件数が年間400件以上となっています。高度な技術が必要とされる人工股関節再置換術も年間20例以上行っており、難度の高い症例は県外からも治療依頼があります。

いつからあるの?

1960年代にイギリスのCharnley(チャンレー)氏が考案した人工股関節が現代の人工股関節の原型と考えられています。経年的に改良が加えられ、世界中で数多くの人工股関節が存在します。

大きくわけて、骨セメント(アクリル樹脂)で固定するセメント人工股関節と骨セメントを使用しないセメントレス人工股関節がありますが、各インプラントメーカーから様々な形状や素材の人工股関節が開発、発売されています。

どんな人が手術の対象ですか?

  • 変形性股関節症大腿骨頭壊死、関節リウマチの患者さんが対象になります。
  • 若年者で関節の変性、変形が軽度の場合には自分の関節を利用する関節温存術が選択されることもあります。

どうやって手術するのですか?

  • 【アプローチ】
    股関節の前方、側方、後方を切開して展開する方法があり、一般的には後方が多く用いられますが、施設や担当医師によって異なります。当院では後方アプローチを標準的な方法としていますが、活動性が高い患者様にはより抗脱臼性が優れた前方アプローチを選択しています。
  • 【インプラントの設置】
    インプラント(人工関節)は寛骨臼側(カップ)と大腿骨側(ステム)の2つで構成され、それぞれ骨セメントと呼ばれるアクリル樹脂で骨に固定する方法(セメント固定)と表面にポーラスという特殊な小さい凹凸を施した金属を直接骨に固定する方法(セメントレス固定)の2つがあり、年齢、骨の脆弱性、形状などを考慮して使い分けます。
変形性股関節症に対する人工股関節全置換術

左股関節(術前)

左股関節(術後)

右股関節(術前)

右股関節(術後)

手術したらどうなりますか?

  • 手術の結果として一番期待されることは痛みが楽になることです。手術前に感じていた股関節の痛みは大きく軽減すると期待されています。
  • 股関節の動きの悪い患者様は術前本来の長さよりも短くなっていることが多いですが、3㎝程度の脚長差であれば、補正することも可能です。

術後のリハビリテーション

翌日から立位、歩行訓練を開始し、1週間で杖歩行、2週間で自宅退院を目標としたプログラムを進めていきます。

高齢者などリハビリに時間が必要な患者様については、安全に自宅の生活ができるようになるまで地域包括ケア病棟で延長したリハビリを受けることができます。

手術を受ける上でのリスクは?
術後はどんなことに注意すればいいですか?

一般的な術後合併症は下記の通りです。
患者さんの注意で予防できることもありますので、よく理解しておきましょう。

  • 出血:200-400ml程度ですが、自分自身の貯血があると輸血のリスクはぐんと減ります。当院では原則として自己血採血を行っています。
  • 感染:0.5%に生じるとされてますが、口腔内の衛生状態(虫歯、歯周病)が重要とされていますので、術前に歯科受診を勧めています。
  • 血栓症:エコノミークラス症候群とも呼ばれ、下肢静脈内にできる血の塊のことで、長期臥床や麻酔、手術などが契機になって発生します。大きな血栓が静脈につまることがあると、致命的な合併症となり得ますので、様々な予防法と早期発見の超音波診断を組み合わせています。
  • 脱臼:アプローチにもよりますが、屈曲+内転+内旋(和式トイレに入る姿勢)は後方脱臼を引き起こす可能性があるとされていますので、少なくとも術後3ヶ月は余り無理な姿勢を取らないことが大切です。
  • 人工股関節の耐久性:現在の人工股関節の耐久年数はおよそ15-20年程度とされており、最終的には摩耗したり、弛んでくるとされています。長く保つためには過度な負荷をかけないように配慮が必要です。弛みを生じても初期段階では、自覚症状はないので、必ず1-2年に一度の定期健診を受けるようにしましょう。

当院における人工関節の特色

充実のスタッフ体制

院長以下股関節専門医が3名在籍し、いずれも人工関節学会認定医資格をもつ経験年数10年以上のエキスパートで構成されています。

豊富な経験

年間手術症例は400例以上、開設以来の人工股関節は7,000例以上となっています。

高い技術力

高度な技術が必要とされる再置換術も年間20例以上行っており、難度の高い症例は県外からも治療依頼があります。高度な変形や骨切り後症例にも対応しています。

人工股関節のゆるみに対する人工股関節再置換術

術前

術後

術前

術後

高度な変形に対する骨移植・骨切り併用人工股関節全置換術

患者さんに合った人工股関節を提供

人工股関節にはセメント使用、非セメント使用、前方、側方、後方、アプローチがありますが、当院では患者様に最適な人工関節のアプローチを選択して、より高い満足度と好成績を目指しています。

ナビゲーションの採用

より高い精度で人工股関節の設置を可能にするナビゲーションシステムを採用して、必要な患者様に使用しています。

ナビゲーションシステム

人工関節以外の手術

人工関節の適応でない若年の患者様には寛骨臼骨切り、大腿骨骨切り、関節鏡などの
関節温存手術も積極的に行っており、関節疾患に悩む患者様を多面的に治療することが可能です。

年間手術例

人工股関節施行件数(人工股関節再置換術施行件数)

年度 件数(再置換件数)
2017
353(22)
2018
428(26)
2019
359(25)
2020
337(16)
2021
371(15)
2022
319(38)