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子宮頸がん検診について

 子宮頸がんの原因は、長い間分かりませんでした。1982年にヒトパピローマウイルス (HPV) の感染がその大半の原因であることが発見され、ノーベル医学生理学賞が授与されました。HPVは、"女性の多くが一生に一度は感染する"といわれるウイルスです。感染してもほとんどの人でウイルスは自然に消えますが、一部の人で持続的に感染が続き、がんになってしまうことがあります。また、このHPVには200種類以上のタイプがあり、子宮頸がんの原因となるタイプは少なくとも15種類あることが分かっています。

 当院の婦人科検診では現在、子宮頸がんとHPV高リスク型 (頸がんと特に関連するもの)の同時検査を行なっております。子宮頸がん検診は異常なかったが、ウイルス検査が陽性で心配だという方に。確かにウイルス検査陽性であれば、陰性に比べ子宮頸がん発症のリスクが上昇はします。しかし陽性でも過剰な心配はいりません。なぜならすぐに癌はできないからです。正常細胞にHPVウイルスが感染し、持続的に感染が続くと条件により異型細胞に変異する場合があります。さらに軽度異型から高度異型に変異し、最終的にがんに移行することがあります。このあいだの過程には通常は数年から十数年を要します。それぞれの病態に合わせて、定期的にがん検診を受診していれば心配することはありません。ただ日本の女性の検診受診率は約43%であり、欧米先進国の70〜80%に比べるとかなり低いことは残念なことです。

 ところで子宮頸がんの原因はウイルスであると説明しました。ウイルスならワクチンがあるのでは? 御存知の方も多いと思いますが、これがHPVワクチンです。若い未婚の女性に接種が勧められており、日本では小学校6年から高校1年の女子を対象に公費で接種を提供しております。これも残念ですが、日本での接種率は世界では極端に低いのが現状で、さらなる普及が望まれます。

 子宮頸がんに年間約1.1万人の方がかかり、そのうち年間約2,900人の方が亡くなっているそうです。このためHPVワクチン接種、定期的な子宮頸がん検診の普及が望まれます。

済生会山形済生病院 産婦人科 阪西通夫