薬剤部

昨今、患者さんに質の高い医療を提供するため、チーム医療が重要視されています。私たち病院薬剤師はチーム医療の中、薬の専門家としての知識・技能を駆使して、薬物療法、医薬品の適正使用、医療安全等に貢献することが求められています。

患者さんが安心し、また、安全に治療を受けられるよう、他の医療スタッフと協力しながら、病棟や外来化学療法室、入退院支援室等、病院内の様々なところで業務を行っています。
また、薬学生の長期実務実習受入れを行い、次世代の薬剤師育成にも取り組んでいます。 

病院薬剤師の業務は多岐にわたります。主な業務を以下に紹介します。

一般調剤

医師の処方に基づき、処方内容について薬の量・飲み方・飲み合わせ・副作用などのチェックを行っています。処方内容に疑問点があれば医師に問い合わせ、個々の患者さんに適した形で調剤しています。
また、令和2年7月より薬剤部独自に作成した薬品監査支援システムを導入しています。調剤薬の監査をはじめ、薬の重複や投与間隔のチェック等、システムを活用しながらより安全に薬を提供できるよう努めています

当院では平成24年より院外処方せんの発行を開始し、令和3年より院外処方せんに検査値を記載しています。保険薬局の薬剤師が薬の量や副作用などをより詳細に確認することができ、これまで以上に安全な薬物療法の提供が期待できます。

*詳細は院外処方せん発行のお知らせのページをご覧ください。

注射剤調剤

処方内容について、投与量・経路・速度・期間・配合変化などのチェックを行い、注射剤の調製(抗がん薬、高カロリー輸液)や調剤を行っています。

処方内容が適切であるかを確認し、患者さんごとに注射剤を調剤し供給しています。抗がん薬の調製は、レジメンごと、患者さんごとに薬歴を作成し、がん専任薬剤師が監査を行い、確認後に調製します。調製は、医療スタッフの被曝防止の観点からアイソレーターで閉鎖式システムを用いて行います。当院独自に作成したバーコード監査システムを使用し、抗がん薬の取り違い防止や調製液量の確認などを行っています。

また、在宅患者の高カロリー輸液(Total Parenteral Nutrition:TPN)調製、携帯型ディスポーザブル注入ポンプへの薬剤充填などの調製も行っています。

薬剤管理指導業務・病棟薬剤業務

当院では薬剤投与後の「薬剤管理指導業務」に加え、平成25年5月より投与前の「病棟薬剤業務」を開始しました。病棟における薬剤師の活躍の場はさらに広がり、私たち薬剤師の仕事は大きな変革を迎えています。

「薬剤師の質の向上は医療の質の向上」ととらえ、医師、看護師、その他医療スタッフから、チーム医療になくてはならない存在として、薬剤師が求められるよう日々研鑽しています。そしてチーム医療を通じ、患者さんには安全で安心な薬物治療を受けていただけるよう、細心の注意をはらって薬の説明をさせていただいています。

退院時には患者さんおよびご家族等にお薬について説明します。また、退院時にお持ち帰りいただく薬について確認しています。治療に必要な薬を過不足なくお渡しし、飲み間違いなく服用していただけるように調整しています。退院後も安全で安心な薬物療法を継続していただけるようサポートいたします。入院前の薬の内容に変更、中止等があった患者さんにおいては、退院時に同意を得た上で、その理由やその後の患者さんの状態等を文書(退院時薬剤情報サマリー)でご利用の保険薬局へ情報提供する取り組みも行っています。

DI業務

医薬品情報管理室は、DI(Drug Information)室と呼ばれ、医薬品情報の「収集」「管理」「伝達」を行っています。書籍や各学会からの情報、MRからの情報、インターネットなどを通じて、医薬品に関する様々な情報を収集します。収集した情報は、分類、整理、評価を行い、院内での対応を立案します。情報の伝達手段として、DI-NET、DIニュース、院内メール等を使い分けながら、正確でわかりやすい根拠に基づいた情報発信に努めています。
その他、薬事委員会の事務局としての活動や、院内フォーミュラリー(最も有効・安全でかつ経済的な医薬品の使用指針)の作成を行っています。また、腎障害時の薬剤減量・間歇投与薬剤の投与間隔のアラート設定など、独自のシステムを用いたチェック体制を構築し、積極的な情報活用に努めています。

製剤(院内特殊製剤)

患者さんの病態やニーズに対応するため、経済性、安定性の面から市販されていない薬剤の調製を行っています。院内特殊製剤の中には、未承認医薬品や試薬を製剤化するもの、適応外使用するものもあり、必要に応じ倫理審査委員会で審査されます。申請書が提出されると薬剤部では、有効性・安全性、原料の調達、製剤手順、製剤化したものの使用期限などを検討します。

薬剤投与計画

抗MRSA薬など投与量の調整が必要な薬剤について、薬物治療モニタリング(Therapeutic Drug Monitoring:TDM)を行なっています。薬物血中濃度をもとに、患者の検査データ、年齢、疾患、臨床症状などの情報を考慮し、より安全でより効果的な投与量・投与方法を設計し、医師に情報提供を行うことで個々の患者さんに合わせた適切な薬物療法を支えています。

PET/CTセンター

PET/CT検査に使用する放射線薬剤フルオロデオキシグルコース(FDG)は、院内の製造施設で製造されます。薬剤師は製造工程で、主に薬剤の品質管理及び各種検定に関わっています。また、ホットラボ(PET薬剤製造室)の環境測定試験を行うなど、製造衛生管理基準に則った管理を行っています。

*詳細はPET/CTセンターのページをご覧ください。

チーム医療

NST、褥瘡対策委員会

当院のNST(栄養サポートチーム:Nutrition Support Team)は平成17年にNST稼動施設認定を受け、医師、管理栄養士、看護師などとともに、患者さんの栄養状態を評価し、適切な栄養管理のサポートを行なっています。週1回のカンファレンス・回診の中で薬剤師は患者さんの投薬状況を確認し輸液や内服薬の提案などを行っています。また、皮膚・排泄ケア(WOC)認定看護師を中心に活動している褥瘡対策委員会があり、NST担当薬剤師も褥瘡回診に月1回参加しています。*活動の詳細はNST(栄養サポートチーム)のページをご覧ください。

ICT・AST

ICT(感染制御チーム:Infection Control Team)は週1回院内を巡回し、院内感染事例の把握を行うと共に、院内感染防止対策の実施状況の把握及び指導を行っています。
AST(抗菌薬適正使用支援チーム:Antimicrobial Stewardship Team)は、感染症治療において、効果的な治療、副作用の防止、耐性菌出現のリスク軽減のため、抗菌薬の適正使用を支援しています。
薬剤師は、ICT・AST双方に参加し、院内と地域の感染制御に尽力しています。特にASTでは、専従者として、感染症治療のモニタリングを実施し、対象患者に対して、微生物検査・血液検査・画像検査等の実施状況を確認し、初期選択抗菌薬の選択・用法・用量の適切性、必要に応じた治療薬物モニタリングの実施などを経時的に評価し、必要に応じて主治医にフィードバックを行っております。
当院は感染防止対策向上加算1を取得しており、当該医療機関と定期的な合同カンファレンスを開催するなど連携を図り、地域での感染対策に取組んでいます。

*ICT活動の詳細はICT(感染制御チーム)のページをご覧ください。

緩和ケア

緩和ケアチームは、医師・薬剤師・看護師・理学療法士・栄養士・医療ソーシャルワーカー・臨床心理士で構成されています。薬剤師は、全人的疼痛に対して薬物治療の面から貢献しています。患者さんへの服薬指導はもちろんのこと、痛みの程度や副作用などの状況を把握し、処方提案を行っています。

外来化学療法室

医師・薬剤師・看護師・栄養士・公認心理士など多職種が連携して患者さんへ薬物療法を提供しています。薬剤師は、外来での治療の質を向上させるために、レジメンのスケジュール管理、服薬指導、副作用モニタリング、副作用への対応、処方提案などを行っています。また、地域の保険薬局と連携を強化するため、連絡書やGoogleフォームを利用したトレーシングレポートを活用した情報共有を行っています。(トレーシングレポートとは、患者さんの服薬状況や副作用の発現状況などの情報を保険薬局から病院へフィードバックしてもらう仕組みのことです。)
様々な取り組みで、安全で有効な薬物療法の提供に努めています。

入退院支援室

入退院支援室では、患者さんが安心して入退院出来るよう、看護師・薬剤師・MSW・事務職員等がサポートを行なっています。薬剤師は、患者さんが服用している医薬品の鑑別(医薬品名・薬効・服用方法等)を行ないます。また、手術や検査前に中止しなければならない医薬品を確認し、患者さんへ説明を行ないます。

糖尿病教室

糖尿病治療を受けられている、入院・外来患者さんを対象にした糖尿病教室が、月に2回開催されています。薬剤師は1回目の教室に参加し、スライドを使いながら、糖尿病治療薬の薬効や副作用、薬の飲み方や使い方、インスリン治療について、低血糖症状と対処方法等をお話ししています。

薬剤師外来

外来通院中の患者さんに安全かつ適正に薬を使っていただくことを目的として、平成30年6月に「薬剤師外来」を開設しました。薬剤師外来ブースを2か所設置し、入院前の使用薬剤の確認、自己注射製剤の手技の説明、内服抗がん薬の導入指導、子宮頸がんワクチンの説明などを行っています。

妊娠と授乳 お薬相談窓口

2023年2月1日より、「妊娠と授乳 お薬相談窓口」を開設しました。
当院に通院中の方、当院でご出産歴のある方を対象に、妊娠中・授乳中の薬の使用について薬剤師がご相談を受け付けます。受付時間、受付方法については以下をクリックしてご確認ください。
ご相談・ご質問がありましたら、どうぞお気軽に薬剤師へお尋ねください。
詳細はこちら

健康食品相談窓口

2024年5月16日より、「健康食品相談窓口」を開設しました。
当院で診療を受けている方を対象に、服用中の健康食品やサプリメントについての様々なご相談に薬剤師が対応いたします。相談窓口のご利用手順については下記をクリックしてご確認ください。
ご相談、ご質問がありましたら、どうぞお気軽に薬剤師へお尋ねください。
詳細はこちら

学会発表 実績

学会発表の演題を紹介しています。詳細はこちらをご覧ください。

薬学実務実習

6年制薬学教育の導入で必修となった、薬学生長期実務実習の受け入れを行っています。
実習内容は、注射剤の調剤や無菌調製、ベッドサイドでの服薬指導といったカリキュラムの内容に加え、病棟業務、ICT、NST、緩和ケア、がん化学療法等のチーム医療への参加等、病院ならではの業務を経験できるよう取り組んでいます。

各種資格等取得状況

当院の薬剤部には、36名の薬剤師が在籍し、最新の医療を安全に提供するため、日々研鑽に励んでおります。ここでは、当院の薬剤師が取得している主な資格をご紹介いたします。

※ 資格名(取得人数)
 日本病院薬剤師会がん薬物療法認定薬剤師 1名
 日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師 3名
 日本糖尿病療法指導士 2名
 臨床栄養代謝学会栄養サポートチーム(NST)専門療法士 2名  
 第一種作業環境測定士(放射性物質) 1名
 周術期管理チーム認定薬剤師 1名
 日本薬剤師研修センター認定実務実習指導薬剤師 3名
 日本病院薬剤師会認定指導薬剤師 9名
 日本病院薬剤師会病院薬学認定薬剤師 14名
 日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師 6名
 介護支援専門医 2名
 山形糖尿病療法指導士 2名
 診療情報管理士 1名
 日本薬剤師会生涯学習認定 JPALS 3名
 吸入療法アカデミー認定吸入指導薬剤師 3名
 肝炎医療コーディネーター 8名
 骨粗鬆症マネージャー 2名
 救急認定薬剤師 1名
 認定クリニカル・トキシコロジスト 1名  (令和6年5月24日現在)

薬剤部 病院見学会について

薬剤部では、当院への就職を希望される薬剤師や学生さんを対象にした病院見学会を随時開催しています。
見学を希望される場合は、当院人事課へメールまたはお電話でお問い合わせください。