腹腔鏡手術について ~安全で質の高い腹腔鏡手術を~

腹腔鏡手術は、腹腔内をモニターに映して、小さな穴から専用の器具を用いて行うため、開腹手術より高度な技術が必要です。 日本内視鏡外科学会では『技術認定制度』を設けています。合格率が3割以下の非常に厳しい審査ですが、山形県内の技術認定医11名(消化器・一般外科領域、2022年5月時点)のうち、当院外科には2名が在籍しています。 患者さんに安心して頂けるよう万全の体制を整えております。

腹腔鏡手術(ふくくうきょう)とは

腹腔鏡って何?

腹腔鏡は内視鏡(棒状の小型カメラ)の1つで、内視鏡をお腹(腹腔)に入れることから「腹腔鏡」といいます。

腹腔鏡手術とはどんな手術?

腹腔鏡手術は開腹手術に比べ、「傷が小さく、身体への負担が少ない手術」です。また、多くの場合「術後の回復が早い」ことも特徴です。
お腹に細いトロッカー(筒のようなもの)を数か所挿入し、腹腔鏡で内臓を観察しながら、長細い鉗子・はさみ・凝固切開装置などの道具を使って行います。
当院外科では、胆石症、胃癌、大腸癌、鼠径ヘルニア、虫垂炎などで適応のあるものに腹腔鏡手術を行っています。
ここでは具体的な例を一番多く施行されている胆のう摘出術に関して説明します。

例:胆のう摘出術 胆石の入った胆のうという袋状の臓器を取り出す

イラスト1.png

(イラストは消化器病学会ガイドライン「胆石症」から引用)

無題1.png

  1. おへそを切開して直径5-12mmの筒(トロッカーという)を入れ、二酸化炭素を抽入してお腹の中に空間をつくり、腹腔鏡を差し込む。お腹のなかの状況をテレビモニターに映し出す。
  2. 他の部位に数か所直径5mmのトロッカーを挿入して、細長い道具を使いながら胆のう管という部分で切って、くっついている肝臓からはがす。
  3. おへそから胆のうを取り出す。

腹腔鏡手術のメリット(開腹手術に比べ)

・画質の良いモニターに内臓の様子が映し出され、詳しく観察でき精密な手術が出来る。
・お腹を膨らませている圧により、静脈性の出血が抑えられ、出血量が少なくなる。
・傷が小さく身体に対する負担が少ない、術後の回復が早い。
・傷が小さく、手術部位以外の内臓にふれる機会も少ないため、手術後に起こる癒着が少ない(術後の癒着性の腸閉塞の可能性が少なくなる)。

写真2編集後.png

左:開腹の胃の手術 右:腹腔鏡の胃の手術(患者さんの承諾を得て掲載しています)

腹腔鏡手術の留意点

・技術的には難しい場合がある。
・手術既往や強い炎症がある時、内臓脂肪が極端に多い場合には逆に危険な場合があり、開腹手術に移行することがある。
・時間がかかることもある。
・触覚がない、視野以外の内臓の様子が分からないことがある。

どのくらいで退院できる?

腹腔鏡手術は多くの場合非常に回復が早く、当院では胆のう摘出や鼠径ヘルニアは術後2~3日、胃や大腸切除では7~10日程度で退院となります。

腹腔鏡手術には様々な長所がありますが、なんでも腹腔鏡手術でしていいというわけではありません。安全性が第一で、悪性の病気の場合は根治性が担保されていなくてはなりません。
当院では手術に関して患者さんとお話合いの際は、腹腔鏡手術を強制してはいません。お勧めする場合でも開腹手術のお話をして、長所と留意点をご理解頂き、納得いただいた場合に腹腔鏡手術を行っております。

当院外科で可能な腹腔鏡手術

  • 腹腔鏡下胃切除(幽門側、噴門側) 胃全摘 部分切除(内視鏡合同手術)
  • 腹腔鏡下結腸切除、直腸切除
  • 腹腔鏡下胆嚢摘出
  • 腹腔鏡下総胆管切石
  • 腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術
  • 腹腔鏡下虫垂切除術
  • 腹腔鏡下膵尾部切除
  • 腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア修復
  • 腹腔鏡下直腸脱修復術
  • 腹腔鏡下尿膜管遺残切除    など

鼠径ヘルニアの腹腔鏡修復術について

最近の動向として、鼠径ヘルニアの腹腔鏡修復術が増加しています。

鼠径ヘルニアとはどんな病気?

一般的には「脱腸」と言われていますが、正式には「鼠径ヘルニア」です。足の付け根の少し上が膨隆している状態です。鼠径とは下腹部の足の付け根の少し上のあたりの身体の部位のことで、ヘルニアは身体の一部が正常でないところに飛び出していることです。鼠径ヘルニアの場合、飛び出しているものは腸の一部です。正常な状態では内臓は腹筋による壁で守られているためお腹の壁から飛び出しませんが、鼠径部の腹筋の一部が弱くなって、もともと鼠径部にある細いトンネルが緩くなってヘルニアとなります。

手術の適応は?

痛みや重苦感などの症状を伴う場合は手術適応となります。
ただ、出たり引っ込んだりしているだけの場合は手術の絶対的な適応とはなりませんが、だんだんヘルニアが大きくなりますし、内臓が大きく飛び出して強い痛みを伴って戻らなくなる嵌頓(かんとん)状態になることがあり、この場合は緊急的な処置(場合により手術)が必要となります。

腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術について

現在ガイドラインでは鼠径ヘルニア修復術にメッシュ挿入が推奨されています。内臓が飛び出していた部位の筋肉の内側にメッシュという人工の膜をあてがうのです。
従来メッシュはヘルニアの直上を切開して挿入していましたが、近年、ガイドラインでは腹腔鏡手術で内側からメッシュを当てた方が痛みが少なく、回復・社会復帰が早いということで推奨されております。
特に当院のように技術認定医が在籍している病院では安心して腹腔鏡手術を受けて頂けると思います。全ての鼠径ヘルニアに適応があるわけではないので、詳細についてはご相談下さい。
当院では1~2日前に入院していただき、手術後は1~2日で退院となっております。

治療実績

( )は腹腔鏡下手術
胆石には胃や大腸と一緒に切除したものも含む

2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
胃癌 39(15) 24(12) 21(12) 21(9) 18(8)
大腸癌 55(26) 55(22) 61(24) 54(28) 46(31)
胆石 43(36) 37(34) 60(55) 46(43) 60(58)
鼠径ヘルニア 87(14) 89(31) 134(58) 119(40) 113(58)
虫垂炎 12(10) 14(11) 11(8) 17(15) 15(15)

担当医師

川口清(H4年医師免許)

  • 日本外科学会〔専門医・指導医〕
  • 日本消化器外科学会〔専門医・消化器がん外科治療認定医・指導医〕
  • 日本消化器病学会〔消化器病専門医・指導医〕
  • 日本がん治療認定医機構〔がん治療認定医〕
  • 日本内視鏡外科学会〔技術認定医〕

藤本博人(H14年医師免許)

  • 日本外科学会〔専門医・指導医〕
  • 日本消化器外科学会〔専門医・消化器がん外科治療認定医・指導医〕
  • 日本内視鏡外科学会〔技術認定医〕
  • 日本食道学会〔食道外科専門医・食道科認定医〕

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(右から 川口 清(外科診療副部長)、藤本 博人(外科診療副部長))

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