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下肢血行障害を生じる他の疾患(バージャー)

バージャー氏病(TAO:Thromboangitis obliterans)

(1) 病気の概要

バージャー氏病は、血管の炎症(血管炎)により手や下肢の血行障害をきたす疾患です。
40歳以下のアジア人、男性に多い病気です。バージャー氏病の発症と症状の悪化には、喫煙と深く関与していることが知られています。

バージャー氏病で血管炎や閉塞を起こす血管は、主に小動脈や中動脈の手や足の末梢の血管です。さらに静脈の炎症や神経の障害が併存することがあります。手や指の末端の循環障害により潰瘍や壊疽により、手指や足趾の切断が必要になることがあります。

病理検査(顕微鏡検査)では、小動脈が血栓(血の塊)で閉塞しており、その中に炎症性細胞(膿瘍)の集まりが見られます。これらの所見から、バージャー氏病の発症には何らかの感染症が関与していると考えられており、特に口内細菌(歯周病菌)が歯牙欠損部分や歯周病巣から血液中に入り込み、手足の小さな血管に運搬され、血栓形成や血管炎を発症させていると推測されています。
一般的に喫煙者では口腔内の衛生状態が悪いため、歯周病が進行し上記の機序によってバージャー氏病に陥りやすいとも考察されます。

注意が必要!

  • 40歳以下のアジア人(特に男性)
  • 喫煙と関与
(2) 診断

40歳以下のアジア人、特に男性で、喫煙歴があり、手指や足趾の冷感・疼痛・潰瘍・壊疽が認められた場合にはバージャー氏病を疑う必要があります。

バージャー氏病の病変血管は手あるいは足の末端の血管の場合が多いため、確定診断のためには血管造影検査が必要になります。バージャー病における血管閉塞様式の特徴としては、小動脈の突然の途絶や特徴的な側副血行路の発達が見られます。また、やむを得ず手指や足趾の切断に至った場合には、病理検査にて動脈炎の所見を確認する場合もあります。

(3) 治療

前述のようにバージャー氏病の発症と病状の悪化には、喫煙が極めて密接に関与しています。従って、診断後は速やかに禁煙する必要があります。さらに血管拡張薬の投与と手指・足の安静、適切な創処置により潰瘍や小さい範囲での壊疽は改善します。

一方で、禁煙できず、治療困難で壊疽が悪化した場合などには、手指や足趾の切断が必要になります。また、重度の間歇性跛行(歩行すると、血行障害によりふくらはぎや足が痛くて歩けない)や潰瘍が難治性である場合などは、バイパス術による血行再建が必要です。

しかし、バージャー氏病の動脈は一般的な動脈硬化性疾患による血行障害とは異なり、バイパス部位の動脈が攣縮(けいれんを起こして極めて細くなる)を生じやすく、さらに血栓症と炎症を繰り返すため血管がつまりやすいという特徴があります。