健康コラム
第7話 高血圧(こうけつあつ)について
内科(循環器) 池田 こずえ 医師
Q. 高血圧になったら、必ず薬を飲まなければいけないのでしょうか?また、高血圧の薬は、一度飲んだら一生続けなければならないのでしょうか?
A.高血圧になると、頭痛・肩こり・めまいなどの症状が出ることもありますが、大半の方は血圧が高くても特に症状は感じません。高血圧を治療する目的は、このような症状を無くす ためではなく、高血圧のために脳・心臓・腎臓などの大事な臓器が障害されるのを防ぎ、脳出血・脳梗塞・心筋梗塞・腎不全などの発症や再発を防ぐためなのです。
2004年に日本高血圧学会でまとめられた「高血圧治療ガイドライン2004」では、血圧の分類(表1)は、なるたけ血圧を低めにして臓器障害を防ごうという主旨で「至適血圧」(最も良い血圧)を収縮期血圧120mmHg未満、かつ拡張期血圧80mmHg未満としています。「高血圧」は、収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上です。「至適血圧」と「高血圧」の間に「正常血圧」、「正常高値血圧」の分類があります。(自宅で測る家庭血圧は、診察室の血圧よりも低いのが普通であり、収縮期血圧135mmHg以上、または拡張期血圧85mmHg以上を高血圧とします。)
表1 成人における血圧値の分類
分類 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 | |
至適血圧 | <120 | かつ | <80 |
正常血圧 | <130 | かつ | <85 |
正常高値血圧 | 130〜139 | または | 85〜89 |
軽症高血圧 | 140〜159 | または | 90〜99 |
中等症高血圧 | 160〜179 | または | 100〜109 |
重症高血圧 | ≧180 | または | ≧110 |
収縮期高血圧 | ≧140 | かつ | <90 |
重症高血圧(収縮期血圧180mmHg以上、または拡張期血圧110mmHg以上)の方や、臓器障害・心血管病・糖尿病のある方はすぐに降圧薬で治療を開始しますが、それ以外の高血圧の方は、原則として、まず生活習慣の修正(表2)を行って、それでも収縮期血圧140mmHg未満、かつ拡張期血圧90mmHg未満にならないときには降圧薬を開始します。
表2 生活習慣の修正項目
1) 食塩制限6g/日未満
2) 野菜・果物の積極的摂取*コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える
3) 適正体重の維持:BMI(体重(kg)÷[身長(m)]2)で25を超えない
4) 運動療法:心血管病のない高血圧患者が対象で、有酸素運動を毎日30分以上を目標に定期的に行う
5) アルコール制限:エタノールで男性は20~30ml/日以下、女性は10~20ml/日以下
6) 禁煙
*ただし、腎機能障害や糖尿病をもつ人の場合は病状の悪化につながる場合があるので、主治医によく相談すること。 正常高値血圧の方も、それ以上血圧が上がらないように生活習慣の修正を行います。また、降圧薬を飲んでいる方も生活習慣の修正は継続して行います。もちろん、この血圧は目安で、年齢や合併する病気などで治療の目標値が違ってきます(表3)。
表3 降圧目標
- 高齢者(60歳以上)140/90mmHg未満
- 若年・中年者130/85mmHg未満
- 糖尿病患者
- 腎障害患者130/80mmHg未満
血圧の薬は、絶対にやめられないものではなく、十分血圧が下がれば、主治医の指示によって休んだり、やめたりもします。その場合も生活習慣の修正は続けます。ただ、血圧が高い時期が長く続いた方では、ある程度の臓器障害が起きていて、すっと薬を続けるのが良い場合が多いです。 高血圧の薬(降圧薬)は種類も多く、副作用のほとんどない薬が数多くありますので、必ず自分にあった薬・量が調節できます。「薬を飲みましょう」と言われた方は、心配せずに薬を開始してみましょう。
池田 こずえ 医師
昭和33年生まれ
出身地 山形県村山市
最終学歴 山形大学大学院 医学研究科卒業
職 歴 平成7年 済生会山形済生病院入職
資 格 日本循環器学会 認定循環器専門医
日本内科学会認定内科医
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