健康コラム

第32話 睡眠時無呼吸症候群

呼吸器内科  土田文宏
1.睡眠の重要性 人はどうして眠るの?

睡眠は人生の約3分の1を占めると言われています。そう考えると寝ている時間とは人生の多くを占めています。

睡眠は、もちろん体の疲れをとるために必要ですが、最も大事な点は脳を休めるためという事でしょう。また睡眠中は様々なホルモン(成長ホルモンやセロトニンなど)が分泌され、新陳代謝により日中疲れた身体と心を効率よく修復します。また、睡眠には免疫力を高める役割もあります。睡眠不足が続くと、睡眠中も交感神経が過度に緊張し風邪をひきやすくなるといわれています。

身体の疲れは、横になって休むだけでもある程度回復できますが脳は起きている間はずっと働きづめで、脳は眠る事でしか休息できません。

私たちは、心と身体の健康を保つために眠る必要があるのです。

睡眠の種類

睡眠にはnonREM睡眠(頭は寝ているが体が起きている睡眠):睡眠の深さstage1~4と REM睡眠 (頭は起きているが体が寝ている睡眠):1.5時間~2時間があり繰り返しています。

特に深い眠りは、寝入り初めのnonREM睡眠の時期に発生し多くの成長ホルモンが分泌され心と身体を修復します。REM睡眠時には脳の中では多くの情報の整理が行われ記憶や学習した事を定着させていると考えられています。夢はREM睡眠のときにみるといわれています。

睡眠の効果・役割

①脳と体の疲れを取る ②ストレスの解消 ③体の成長や老化防止 ④病気の予防 ⑤記憶の定着・学習効果の効率化

図1 REM睡眠とnonREM睡眠

睡眠の病気・・・多くの病気がありますが私たちの周りで身近なものに睡眠中にいびきをかいたり呼吸が止まってしまうという睡眠時無呼吸症候群という病気があります。 以下、睡眠時無呼吸症候群に関しお話したいと思います。

2.睡眠時無呼吸症候群(SAS;Sleep Apnea Syndrome)

無呼吸とは、10秒以上呼吸が止まってしまうことをいいます。

  • 無呼吸(Apnea):10秒以上の呼吸停止。
  • 低換気(Hypopnea):10秒以上続くSPO2酸素飽和度の低下を伴う呼吸運動の低下
  • AHI:1時間あたりの無呼吸と低換気を合わせた回数

SASの定義:AHI 5以上の睡眠障害に自覚症状を伴う
      AHI 15以上(症状の有無にかかわらず)

3.SASの種類
  • 中枢型(CSAS)息が止まって、胸や腹の呼吸運動も止まっている。 (脳からの呼吸刺激がない)
  • 閉塞型(OSAS)息は止まっているが、胸や腹は呼吸しようと動いている。 (脳から呼吸刺激があるが、のどで空気の流れがブロックされる)
  • 混合型 最初中枢型で始まり閉塞型に移行(病態生理上は閉塞型)閉塞性がほとんどと考えられています。

その多くは閉塞型の睡眠時無呼吸症候群が占めます。

4.SASの頻度

日本の報告で有病率は、男性で3.28%、女性で、0.5%

一般人口の1~2%(約100万人)で未治療の治療が必要な患者は約50万人ともいわれています。

5.なぜSASが身体に悪いのか?

①熟睡感がない⇒ 仕事能率の低下 ・・生活の質低下
②合併症
心筋梗塞を起こした人の30%、脳卒中を起こした人の50%、高血圧がある人の30~50%、糖尿病がある人の30%に睡眠時無呼吸症候群があると言われています。
健常人に比して、脳血管障害・脳梗塞は10倍、高血圧3倍、虚血性心疾患6倍の危険因子と考えられています。
③運転の事故 risk 7倍

*生活の質だけでなく将来の疾患の危険因子となっている
⇒Syndrome X:"死の四重奏"(Reaven GM, Diabetes 1988)

  • 高血圧
  • 肥満
  • 糖尿病・インスリン抵抗性
  • 高脂血症

上記4疾患と並び生活習慣病の一つと考えられています。

6.SASの症状

図2に示すような症状があり、主なものに

  • 日中の眠気
  • いびきの指摘
  • 疲労感や集中力の低下
  • 運転中の居眠り

などがあります。 SASが高血圧の原因と考えられる方もいます。

図2

7.SASの予後

昔の文献では(図3)未治療の閉塞性の睡眠時無呼吸症候群の生命予後は極めて不良で中等症~重症の場合(AI>20)の8年後の生存率は63%に過ぎないとの報告もあります。

図3

最近のスペイン2005年の報告では、無治療OSASは、10年間で心血管イベント31.9% 死亡10.6%に対し、健康人は心血管イベント7.5% 死亡3.0%と明らかに予後が悪いとの報告があります。自覚症状があって睡眠時無呼吸症候群の方は、治療が有用と考えられます。

8.SASの診断

図4の流れで診断します。

図4

9.SASの治療

もっとも安全性が高く有効なのはCPAP療法です。CPAP療法とは、睡眠時だけ鼻マスクを装着し空気を一定圧送り込み気道が閉塞するのを防ぎます。

図5

10.終わりに

SASは、生活習慣病の一つとして考えて頂き、将来起こりうる疾患のriskを下げるようにしたい疾患です。また、交通事故などの予期せぬ不幸を招かないように疑わしい方は診断治療をお勧めします。ベッドパートナーからのいびきや無呼吸の指摘や図2の様な症状がある方は、まずは自宅で検査可能ですので是非一度検査をしてみて下さい。

土田 文宏(つちだ ふみひろ)

出身地    山形市
最終学歴   東京医科大学卒業
職歴     平成18年4月 済生会山形済生病院入職
現職     内科診療副部長・呼吸器内科
専門医    日本内科学会〔総合内科専門医・認定内科医〕
       日本呼吸器学会〔呼吸器専門医〕
       日本呼吸器内視鏡学会〔専門医〕
       日本医師会〔認定健康スポーツ医〕

2014.10.17

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