高気圧酸素治療について
高気圧酸素治療とは?
専用の治療装置内に患者さんを収容し、高い圧力と高濃度の酸素を提供することで、病態の改善を期待する治療です。
この治療による主な効果は3つあります。
1.血中酸素量の増加
私たちが生活している環境は大気圧下(1気圧)であり、酸素濃度約21%の空気を呼吸することで肺に空気を送り、酸素を血液中に取り込みます。しかし大気下では血液中に取り込める酸素量に限界があり、それを超えてより多くの酸素を血液中に取り込むには圧力をかける必要があります。
治療では、装置内を2気圧以上とし、純酸素を流すことで大気圧下の空気呼吸と比べて血液中に溶け込む酸素の量をおよそ15倍程度までふやすことができます。これにより組織の低酸素状態が改善されたり、毛細血管の形成を促進します。
2.気体圧縮効果
体内に貯留したガスが問題となる疾患に対して、加圧することによって気体を圧縮できるため、末梢循環を改善し組織の浮腫を軽減できます。
3.酸素毒性と殺菌効果
酸素が持つ毒性や白血球の殺菌作用の亢進により、細菌を殺菌したり、あるいは発育を阻害することで感染症の治療に有効です。
高気圧酸素治療の適応疾患
現在、日本で保険診療として高気圧酸素治療を実施できる疾患および病態は以下の通りです。ただし、項目によっては専門に診療できる診療科医が不在であったり、装置の仕様により適切な治療効果を得られない可能性があるものは受け入れを行っておりません。
1 減圧症又は空気塞栓に対するもの
(上限7回、但し発症から1ヶ月以内)
2-1 その他のもの(上限10回)
ア 急性一酸化酸素中毒その他のガス中毒
イ 重症軟部組織感染症(ガス壊疽、壊死性筋膜炎)又は頭蓋内腫瘍
ウ 急性末梢血管障害
(イ)重症の熱傷又は凍傷
(ロ)広汎挫傷又は中等度以上の血管断裂を伴う末梢血管障害
(ハ)コンパートメント症候群又は圧挫滅症候群
エ 脳梗塞
オ 重症頭部外傷後若しくは開頭術後の意識障害又は脳浮腫
カ 重症の低酸素脳症
キ 腸閉塞
2-2 その他のもの(上限30回)
ア 網膜動脈閉塞症
イ 突発性難聴
ウ 放射線又は抗癌剤治療と併用される悪性腫瘍
エ 難治性潰瘍を伴う末梢循環障害
オ 皮膚移植
カ 脊髄神経疾患
キ 骨髄炎又は放射線性障害
当院の治療
装置区分:第一種装置(個人用)
機 種:Model-2800J(米国SECHRIST社製)
治療気圧:2絶対気圧以上
加圧方式:純酸素加圧
治療圧力は2気圧以上としています。
患者さんを装置内へ収容後、10分で治療圧力まで加圧します。(加圧工程)
治療圧力に達してから60分間維持します。(治療工程)
60分経過後、途中圧力の変化がない時間を設けながら15分かけて大気圧へと減圧します。(減圧工程)
安全に治療を受けていただくために
高い圧力と高濃度の酸素を使用する環境では、爆発や火災といった事故が発生する可能性が非常に高くなることから、持ち物検査や治療に使われている材料の選定がとても大切です。当院には日本高気圧潜水医学会所属の専門医2名と高気圧酸素専門技師1名が在籍しており、患者さんが安全に治療を受けていただけるよう蜜に連携し合って事故防止に努めておりますのでご安心ください。
高気圧治療実績(令和6年度疾患別患者数)
疾患名 | 患者数 |
---|---|
脊髄神経疾患 | 17 |
骨髄炎 | 9 |
脳梗塞 | 1 |
腸閉塞 | 5 |
コンパートメント症候群 | 2 |
難治性潰瘍を伴う末梢神経障害 | 8 |
合計 | 42 |