カプセル内視鏡について
1.カプセル内視鏡の概要
26mm X 11mm大のカプセル型の内視鏡を飲み込んで行う検査です。カプセルの先端にレンズがあり、毎秒2枚の割合で合計8時間撮影(約 57000枚の画像)を行います。撮影画像は体に装着した10cm大の記録装置に撮影後すぐに送信され、記録されます。検査画像は検査終了後、約1時間のダウンロードを行い、専用のソフトにて診断可能となります。カプセルは現時点では遠隔操作できるものではなく(将来遠隔操作可能となるかもしれません)、カプセルの動きは消化管蠕動運動まかせとなります。従来の胃カメラ、大腸カメラでは可能となる、消化管内を拡張させる送気操作や組織検査操作などはできず、観察のみとなります。(胃、大腸の画像は記録されるのですが、送気操作はできないため、診断能は低くなります。したがって、カプセル内視鏡の主な目的は小腸疾患となります。)
一方、胃カメラ、大腸カメラと異なり消化管が伸展されることがなく、飲み込んでしまえば通常苦痛は全くないという大きな特徴があります。
胃、大腸はそれぞれ従来の内視鏡がありこれまでも十分な検査が可能でした。一方、小腸は従来の内視鏡では挿入しづらい臓器であり、これまでは CTや造影剤を使用した造影検査が小腸検査の主体であり、外科治療などが行われる前に検査で病変を実際に肉眼で確認できる検査はありませんでした。
カプセル内視鏡は、2000年イスラエルのメーカーにて発表された医療機器であり、小腸をくまなく見られるとはいえませんが、小腸内腔を実際に見られること、検査による負担がほとんどないといった特徴から、現在では世界中で使用されています。日本では、欧米に遅れはしましたが2007年秋に保険適応承認となりました。
当検査は山形では、初めて当院にて導入を行いました。小腸疾患は決して頻度は高くはなく、頻繁に行われる検査ではありませんが、県内の各医療機関と協力を行い、山形県の小腸疾患の診断に寄与したいと考えております。(特に県内で唯一ダブルバルーン型小腸内視鏡を有する山形大学付属病院の消化器内科とは緊密に連携を行っていきます。)
2.どのような人がカプセル内視鏡の適応となるのですか?
現在、カプセル内視鏡の保険適応となる対象は、血液の混じった便ないし黒い便がでる貧血の患者さん(消化管出血の可能性の高い患者さん)で、胃カメラ、大腸カメラを行ったにもかかわらず出血の原因がわからない方となります。
事前に上部消化管内視鏡、下部消化管内視鏡検査を実施し
原因不明の消化管出血を伴う小腸疾患の診断を行うため使用した場合にのみ算定
技術料:17,000円
特定保険医療材料費(カプセル本体):77,200円
本人負担:約 30,000円
3.検査はどのような手順で行われますか?
検査前日までは特に準備はありません。検査は問題がなければ、普通外来で行います。検査当日、自宅で朝5時から、1時間を目安に腸管洗浄液 1リットルを服用いただきます。朝 9時ころ来院いただき、内視鏡室にて受信機器を体に装着し、カプセル内視鏡を飲み込みます。その後は自由行動となります。(3時間程度たてば、軽食も可能となります。)夕方 5時に、再度来院いただき、内視鏡室にて受診機器をはずし検査は終了、帰宅となります。
カプセルは通常1?4日後に、便とともに排出されます。(気がつかない場合も多いようです。
カプセルは使い捨てです。)
診断は検査の込み具合にもよりますが、3~5日程度でつきますので、検査後 1週間後あたりに外来に来ていただき結果説明を行います。
Step 1
カプセルを少量の水で飲み込みます。
Step 2
カプセルは消化管を移動しながら画像撮影をしていきます。
カプセルから発信された画像データは患者様に装着したデータレコーダーに保存されます
Step 3
データレコーダに保存された画像データをワークステーションにダウンロードし、専用ソフトウェアを使用し画像診断を行います。
サンプル動画
4.検査による合併症はあるでしょうか?
飲み込むだけですから、苦痛がないことが大きな特徴です。ただ、検査前にはわからなかったけれど、腸に閉塞部位や大きな憩室があった場合、カプセルがそこでつまり、体外に出てこなくなる症例が非常にまれにあります。腸の中に留まってしまってもとくに体に悪影響は及びませんが、半年以上たっても出てこないようなときは、外科開腹手術で取り出すことが必要になることもあります。
そのため、他検査にて消化管閉塞、狭窄、ろう孔の疑われる患者、診断済のクローン
病患者、放射線腸炎の疑われる患者、腹腔内手術既往患者さんなどは禁忌となります。
ほかには、ペースメーカー患者、嚥下障害患者さんは禁忌です。
妊婦、18歳未満、有憩室患者、糖尿病患者さんなどは注意となっております。
5.カプセル内視鏡の将来は?
近い将来、食道用のカプセル内視鏡、大腸内視鏡がでてきます。欧米ではもう使用されているようです。また、近い将来では必ずしもないかもしれませんが、処置用のカプセル内視鏡も開発は始まっているようです。
6.当院の検査状況
2008年9月から2009年3月まで、18名の検査を行っております。
症例数 | 18例 |
性別 | 男性:10 女性:8 |
平均年齢 | 61.8歳 (男性: 56.3 女性: 67.8) |
適応疾患 | 原因不明消化管出血 11例 |
鉄欠乏性貧血+便鮮血陽性 4 | |
PETにて小腸出血 1 | |
胃癌小腸転移? 1 | |
原因不明一過性小腸炎後 1 | |
由来 | 当院 8例 |
・当科 4 | |
・外科 2 | |
・心臓血管外科 2 | |
大学病院 1 | |
県立中央 3 | |
済生館 2 | |
荘内病院 1 | |
公立置賜総合 1 | |
最上町立病院 1 | |
全小腸観察 | 14 |
飲用できず 1 | |
小腸内停留 1 | |
小腸内で8時間経過 2 | |
胃平均通過時間(胃切除例を除く) | 51.4分 (14例) |
小腸平均通過時間 | 325.0分 (14例) |
所見 | 出血中の 血管拡張病変 1例 |
出血原因の可能性高い 血管拡張病変 1例 | |
出血原因の可能性のある潰瘍? 1例 | |
出血原因の可能性は低い小びらん 2例 | |
出血原因の可能性のない小発赤のみ 11例 | |
狭窄 1例 |