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健康コラム

第53話 「高気圧酸素治療(こうきあつさんそちりょう) Hyperbaric oxygen therapy(HBO)」

高気圧酸素治療とは

私たちは酸素濃度21%の空気を吸って生活しています。呼吸によって血液中に取込まれる酸素には「結合型酸素」と「溶解型酸素」があります。そのほとんどが「結合型酸素」ですが、ヘモグロビンという成分に結びつき全身へ酸素を運搬しています。しかし、ヘモグロビンと結びつける酸素の量には限界があります。一方、「溶解型酸素」は血液中に直接溶け込む酸素で、これは気圧が高くなるほど増やすことができます。HBOは大気圧よりも高い気圧環境下で100%の濃度の酸素を吸入するため、「溶解型酸素」の量を大幅に増やすことができます。これにより身体の隅々まで酸素を行き渡らせることができるほか、酸素の性質や気圧の変化による作用を利用して病態の改善を図る治療です。この治療法が有効な疾患は多数あり、当院では適応のある患者様に対して積極的に実施しています。

高気圧酸素治療装置

当院では米国セクリスト社製の第1種装置を1台所有しています。

機械カタログより.png

第1種装置:1名の患者を収容する装置

主な効果

① 低酸素状態を改善します
② 細菌の発育を阻害する抗菌作用があります
③ 身体内にできた気体の容積を小さくします
④ 創傷治癒(キズの治り)を促進します

適応疾患
  • 急性一酸化炭素中毒その他のガス中毒(間歇型を含む)
  • 重症軟部組織感染症(ガス壊疽、壊死性筋膜炎)
  • 急性末梢血管障害(コンパートメント症候群又は圧挫症候群)
  • 脳梗塞
  • 腸閉塞
  • 網膜動脈閉塞症
  • 突発性難聴
  • 難治性潰瘍を伴う末梢循環障害
  • 脊髄神経疾患
  • 骨髄炎又は放射線障害   ほか
治療について

治療時間は1時間半程度で、透明なカプセル状の装置の中に入り横になって治療を進めていきます。治療中は寝て過ごしたり、テレビやDVDを観賞することもでき、リラックスして治療を受けていただけるよう環境を整備しております。また常にスタッフが側におりますので、何かありましたらマイクを通じて会話することができます。

治療の流れ

① 専用の治療衣に着替えていただきます。
② 病棟にて看護師が安全確認のため、ボディチェックを行います。
  その後、治療室に移動し臨床工学技士がもう一度ボディチェックを行います。
  続いて、症状の確認、耳抜きに関する確認を行います。
③ 治療装置内に入り、治療を始めます。
④ 治療時間終了後、体調に異常がないことを確認して、治療終了となります。

装置2.jpg

副作用について

●酸素中毒
ごく稀に高濃度酸素の長時間吸入によるめまいや悪心、呼吸困難、痙攣などの症状が出る場合があります。

●気圧障害
耳に痛みを生じる場合があります。これは、気圧の変化により鼓膜を介して体内外に圧力差が生じるためですが、「耳抜き」という対処法で解消することができます。
耳抜き方法...つばを飲み込む・大きく口を開ける・鼻をつまんでつばを飲み込む

治療の注意点

HBOは安全な治療ですが、装置内は燃えやすい環境となります。そのため火災などを防ぐ目的で持ち物の制限を行っています。ライター、カイロなどの熱を発するものや、補聴器、腕時計、スマートフォンなどの電子機器類は持ち込むことができません。また、治療前には専用の治療衣に着替えて頂き、安全確認のためスタッフがボディーチェックを行います。

山形済生病院の特徴

当院では1995年より高気圧酸素治療を行っています。年間800例以上の治療実績があり、安全な管理体制のもと治療を行っています。さらに、日本高気圧環境・潜水医学会認定の専門医2名、専門技師1名が在籍しており、全国に44施設ある認定施設の1つでもあります。
施行症例としては脊髄神経疾患や骨髄炎、脳梗塞、腸閉塞など様々な症例に対し各診療科が関り積極的に治療を行っています。

地域医療機関の皆様へ

当院は第1種装置(純酸素)1台体制にて治療を行っており、1日最大6名の治療が可能です。多くは入院での治療となりますが、外来通院での治療も行っています。適応のある患者様やその可能性がある患者様がおられましたら、まずは各診療科の担当医にご相談、ご紹介ください。
また、ご不明な点などありましたら当治療法を担当する臨床工学技士がご説明いたしますのでお問い合わせください。

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