健康コラム

第48話 「骨・軟部腫瘍は、整形外科で扱われる病気」

しこり・腫瘤に気付いたら...

骨・軟部腫瘍は、そのほとんどが四肢・体幹に発症し整形外科で扱われる病気ですが、その中で皮下、頭頚部、胸壁・腹壁、骨盤に発症する腫瘍では、他科との境界領域に関わる場合があります。
しこりや腫瘤として自覚する腫瘍の多くは軟部腫瘍の可能性がありますが、その中で特に硬い腫瘤や腫れは、骨腫瘍の可能性もあります。

はじめに、骨・軟部腫瘍の診察の流れについて説明します。
問診表には、しこり・腫瘤や腫れの部位を書きます。いつ頃気付いたかを書きます。痛みがある場合、痛みを伴う軟部腫瘍の可能性もあり、骨腫瘍の場合は病的骨折と呼ばれる状態の可能性もあります。
視診で腫瘤の部位・大きさ・皮膚の発赤・皮静脈の状況を診ます。触診では、腫瘤の形状・深さ・熱感・圧痛を確認し、深部での可動性を診ます。


画像診断が重要...

検査では、画像検査を行い腫瘍の局在を確認します。軟部腫瘍が考えられる場合でも、軟線X線撮影を行い石灰化像の有無も確認します。骨腫瘍では、X線撮影、3D-CTを行い骨皮質の菲薄化を診ます。MRIでは、単純撮影と腫瘍の血管増生を反映する造影MRIを行います。腫瘍が造影される場合は腫瘍の細胞活性をタリウムシンチで、造骨性・溶骨性変化のある骨病変の場合は骨シンチで評価します。
これらの画像検査に対し放射線科医が下す画像診断は、骨・軟部腫瘍では極めて重要で、病変が炎症・腫瘍?ガングリオン・滑液包炎?良性腫瘍・悪性腫瘍?のいずれかを考える情報となります。
画像診断上で炎症・腫瘍、ガングリオン・滑液包炎、良性腫瘍が考えられる場合、ガングリオンや滑液包炎は穿刺や摘出手術、経過観察の方針となります。良性腫瘍が考えられる場合は、大きさが2〜3cm位までは経過観察もありますが、5cmを超える場合は組織生検や腫瘍摘出術が適応となります。
悪性腫瘍が画像診断上考えられる場合は、針生検または切開生検の適応となります。


病理診断が重要...

生検組織に対し病理医が下す病理診断は、骨•軟部腫瘍では極めて重要で、組織生検や摘出検体に対する病理診断が、確定診断となります。
骨・軟部腫瘍に対し、放射線科医が画像診断を行い、病理医が病理診断を行い、それらの所見に基づいて整形外科医が生検や手術を担当します。


手術について...

手術では、良性軟部腫瘍に対しては軟部腫瘍摘出術を行います。良性骨腫瘍に対しては骨腫瘍切除術を行います。
一方、悪性骨・軟部腫瘍は肉腫と呼ばれます。上皮系悪性腫瘍はがん(癌)と呼ばれますが、肉腫もがんも悪性を意味します。
治療としては、手術療法として腫瘍広範切除術を行い、補助療法として抗癌剤を用いた化学療法、放射線療法を併用します。
関節に近い腫瘍では、腫瘍切除と伴に周辺の筋肉や関節が合併切除されることがあり、関節機能が失われます。これに対し骨や人工関節による機能再建とリハビリテーションが必要になります。


悪性骨・軟部腫瘍について...

骨に発症する悪性腫瘍の中で、骨原発の骨肉腫・軟骨肉腫の発症頻度は極めて低く、希少がんの一つとして扱われています。一方、転移性骨腫瘍(がんの骨転移)が最も多く、その次は血液癌としての骨髄腫で骨に発症します。


骨肉腫について...

骨肉腫は、10歳代に好発する悪性骨腫瘍で、膝周囲の大腿骨遠位・脛骨近位に好発し、上腕骨近位にも発症します。治療は手術が主体ですが、術前・術後に化学療法を行うのが基本です。術前化学療法の目的は、病巣を縮小させ切除範囲を小さくすることと併せて、微小転移を制御するために行うと考えられています。手術法には、患肢温存手術と切断術があります。骨肉腫の広範切除は、長管骨の縦方向では腫瘍から距離を離し、横方向では筋膜などをバリアー(腫瘍に対する壁)として腫瘍のない切除縁を確保した上で神経と血管を含めて患肢を温存できる時に行われます。広範切除後の関節や骨の再建方法としては、腫瘍用人工関節を使う方法や自分の骨(自家骨)を移植する方法があります。切断術は、病的骨折や骨外病変が血管・神経を巻き込み広範に浸潤している場合、化学療法や放射線照射で効果が得られない場合に行われます。予後については、1970年以前は5年生存率が20%未満で、その原因は主に肺転移を制御できないことに起因していました。抗癌剤の開発により化学療法が体系化されてからは徐々に予後は改善し、2000年以降生存率は65.6%、患肢温存率80%との報告が殆どとなり、化学療法の進歩によって予後が改善するようになりました。
軟部に発症する悪性腫瘍には、未分化多形肉腫、脂肪肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍、線維肉腫、血管肉腫などがあります。


未分化多形肉腫について...

最も頻度の高い悪性線維性組織球腫(MFH)は、2002年WHOの改訂で未分化多形肉腫(UPS)と名称変更されました。発生頻度は、軟部肉腫の中の19.6%(順位は1位)を占め、組織起源としては、未分化間葉系細胞が主たる起源と考えられていますが、組織球が起源との説もあります。好発部位は、下肢、殿部、次いで上肢と後腹膜の順で発症します。
手術は広範切除を行います。化学療法は多剤併用療法が行われますが、抗癌剤の効果は高くなく、5年生存率は63.0%と報告されています。腫瘍が血管・神経に近接している場合には合併切除されることが多く、複合組織移植として皮弁術で再建が必要となることがあります。


転移性骨腫瘍について...

近年、癌の登録患者数が増加する中で正確な転移性骨腫瘍の統計はないようですが、10万人以上いるのではないかと推定されています。原発巣としては、肺がん、乳がん、前立腺がん、多発性骨髄腫、肝臓がん、胃がん、腎臓がん、子宮がん、甲状腺がんなどが報告されています。
転移性骨腫瘍においては、骨病変の痛みや病的骨折、脊椎転移後の麻痺をきたす病態に対して、治療が必要となります。治療上、基本的には癌の原発巣に対する治療と同様に、原発巣の担当科が治療計画を立てる事になります。保存的治療としては、癌性疼痛や病的骨折の予防として腫瘍休眠療法としての効果が期待されるビスフォネート製剤の投与が行われ、放射線治療も併用されます。
骨転移に対する手術療法は、Mirelsの病的骨折予測表による切迫骨折の評価を行い、片桐の予後予測表による予後に基づいて整形外科的治療のタイミングや方法を決定する事が重要と考えます。予後不良の状況には、侵襲の大きい手術をしてリハビリをするという状況ではありませんので、侵襲の小さい手術で除痛を図るということになります。


骨・軟部腫瘍のリハビリテーションについて...

骨軟部腫瘍の周術期リハビリテーションとしては、患肢温存・切断術の症例に対する術前の杖歩行と術後のリハビリ、義足や義手の作成、骨転移に対する放射線照射中の安静臥床時は、廃用症候群の予防、以後は安静度に応じた対応があります。骨転移では、周術期以外にも病的骨折、脊椎・脊髄転移に伴う四肢麻痺・対麻痺への対応があります。骨・軟部腫瘍においても予防的、維持的、緩和的リハビリの導入についての体制作りが始まっています。


石川 朗(いしかわ あきら)

昭和28年生まれ
出身地  岩手県
最終学歴 山形大学大学院医学部卒業
職  歴 平成30年4月 済生会山形済生病院入職
資  格 日本整形外科学会専門医
     日本リハビリテーション医学会臨床認定医
     日本リウマチ学会専門医

2019.05.30

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