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健康コラム

第46話 「その人らしい生き方を支援するために~アドバンス・ケア・プランニング~」

◆はじめに

あなたは終活してますか?
あなたの大切な人はどうですか?

この頃よく耳にする終活
生まれたことにより、死は避けられないことです。
いつかは誰にでも死が訪れます。
死が訪れるまでの間を、悔いのない自分らしい生活を送り人生を全うすること。
そして死に対して、真正面から積極的に向き合うことは、大切だと思いませんか?
だからこと、今、考えてみませんか?
それが、アドバンス・ケア・プランニングの考え方なのです。
「それなら必要だよね。」って思いませんか?

◆みなさんが知ってる「終活」

人生の最後の時間を自分らしく過ごすために、生前から用意しておくことが、自分にとっても家族にとっても大切なことです。

しかし、最後の時間と言っても人により終末の時期や時間に違いがあります。できるうちに考えておくことにより、やらなくてはならない作業を整理することもできます。

◆アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは?つまり終活?

自分の人生そして人生の終焉を自分で意思決定しながら、どのように生きるかを考えることは大切なことです。最期までその人らしく生き、良い死(クオリティ・オブ・デス)を迎えるためにアドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning以下ACP)があります。

ACPの定義はさまざまあり、一致した見解は提示されていませんが、「個人およびそのケア提供者との間で行われる自発的な話し合いのプロセスであり、個人の希望を明確化することが重要で、その人の気がかりや価値観、ケアのゴールを話し合うこと」であったり、「疾病などによって必要となった治療やケアの選択の意向と、その人自身のクオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)に関わる信念や価値、希望について、家族や医療者と話し合うプロセス全体である」と言われています。さらにそれらはさまざまな局面で繰り返し行われるものなのです。

・話し合うのは誰か?
 本人と家族、そして医療者・介護者などです。
 その内容によってはMSWやケアマネジャーなど
 も含まれます。

・話し合う内容は?

 現在の病状(直面している、または推定される状態)と今後の見通しのもと治療・ケア、
 療養などの医療・介護に関すること。また、医療のことだけでなく、本人の気がかり、
 価値観や希望、どのように生きたいかなどの生活の意向、さらに本人の死後に家族に望む
 ことなどです。

・どの時期に、何回くらい行うの?

 自分で意思決定できるうちに行う。選択しなければならない事が起きる前に、あらかじめ
 決めておく。健康な時や病状が安定して落ちついて話し合うことができる時期に開始する
 ことが望ましい。本人の意思は変化するのが当たり前であり、これらの選択や考えは状況
 の変化に伴い変わるため、直面するあらゆる局面で複数回繰り返し行うことが望ましいと
 言われます。

◆アドバンス・ディレクティブ(事前指示 以下ADs)とは?

判断能力が低下した、または消失した時に備えて、自ら施される医療に関する希望や拒否などの意向を示しておくもの。

・内容的指示

 生命の危機に直面するような重篤な状態になった場合に、どんな治療や医療処置を希望す
 るのか、または希望しないのかの意向表明。例えば食べられなくなったら、点滴や景観栄
 養などはどうしたいかなどです。
 一般的にこの内容を文章にしたものを、リビング・ウィル(living will)と言う。

・DNAR

 Do Not Attempt Resuscitate(DNAR)は、心肺停止状態に陥った時に、心肺蘇生を受け
 ないという本人の意向

・代理人指示

 本人があらかじめ、自分で意思決定できなくなった場合に変わりに決定してくれる人を決
 めておくこと。

*ACPは人生のさまざまな局面で繰り返し行われる、「話し合いのプロセス」であり、その結
 果としてADsは作成されるものです。そして作成されたADsには人生の最終段階や救急医療
 の場面において医療を含めて、どのように対応してほしいかの本人の意向を表明したリビン
 グ・ウィルと代理人指示が含まれます。そのリビング・ウィルの中に蘇生処置の拒否などを
 指示したDNARを含む構造になっています。
 ACPとADsは個々に独立しているのではなく、ADsはACPの話し合いのプロセスの成果物と
 して作成されることに意味があるのです。

◆ACPを考えるうえでのもう一つの概念、エンド・オブ・ライフケア

エンド・オブ・ライフ・ケアとは「病いや老いなどにより、人が人生を終える時期に必要とされるケア」と言われています。

<エンド・オブ・ライフ・ケアの特徴>

・その人のライフ(生活・人生)に焦点を当てている 。
・エンド・オブ・ライフ・ケアは患者・家族、医療スタッフが、その人の死を意識した頃から
 始まる。
・その人のQOLを最期まで最大限に保ち、その人にとってのよい死を迎えられるようにするこ
 とを目標とする。
・疾患を限定せずがん以外の疾患も対象とする。特に疾患がない高齢者も対象となる。

◆最後に

その人がその人らしく生き、その人らしく最期を迎えられるように、そのために自分に何ができるのかを考えてそばに寄り添っていたいと思います。私達のケアの対象はかけがえのない一人のひとなのです。

西川満則、長江弘子、横江由理子(2016)
『本人の意思を尊重する 意志決定支援 事例で学ぶアドバンス・ケア・プランニング』
南山堂より一部抜粋

新宮 久子(しんぐう ひさこ)

出 身 地  山形県上山市
最終学歴 岩手医科大学附属病院高度看護研修センター
     緩和ケア認定看護師教育課程卒業
職  歴 平成3年4月 済生会山形済生病院入職
資  格 平成26年 日本看護協会緩和ケア認定看護師
     AHA BLSインストラクター
認定看護師(緩和ケア認定看護師)についてはこちら