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健康コラム

第36話 骨粗鬆症(こつそしょうしょう)

はじめに

日本における潜在的な骨粗鬆症患者数は約1200万人といわれ、世界保健機関(WHO)でももっとも重要な慢性疾患10に挙げられている。しかしながら、進行するまで症状が出にくいため約8割が未治療ということが問題である。また、一旦骨折が生じると再骨折になる確率が高くなること(骨折の連鎖)と日常生活にかなりの支障を及ぼすことも問題である。また、これまでは女性特有とされた疾患だが高齢化により男性患者も増加している。

骨粗鬆症とは?

定義:2000年に米国国立衛生研究所で開催されたコンセンサス会議で「骨強度の低下を特徴とし、骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患」と定義された。これまでの骨密度に骨質の要因が加わり2つをあわせて骨強度と定義され、骨密度以外の様々な骨折危険因子の存在が明らかになってきている。

分類と疫学:原因疾患の有無により、原発性骨粗鬆症と続発性骨粗鬆症とに分類される。原発性骨粗鬆症は閉経後骨粗鬆症、男性骨粗鬆症、特発性骨粗鬆症に分けられる(図1)。わが国で骨粗鬆症と診断される患者数は、2011年版骨粗鬆症ガイドラインでは、1280万人(男性300万人、女性980万人)と推計されている。

(図1)

病態:骨は生涯にわたって新陳代謝を繰り返している(古い骨が壊され新たに骨組織が形成される)が、骨が吸収される量と形成される量のアンバランスが生じて骨量が減少して骨粗鬆症を発症する。

危険因子:女性で閉経後に女性ホルモンが低下すること、加齢に伴う運動不足、日常生活動作の障害や長期臥床によって発症する。また、低体重(やせ)、低BMI、既存骨折、喫煙、飲酒、ステロイド薬使用、骨折の家族歴、普段の運動習慣なしは骨折危険因子としてあげられる。

骨粗鬆症の診断

自覚症状:初めは自覚症状に乏しく、加齢とともに身長が低くなる(2cm以上短縮した)、背中が丸くなるなどの症状があれば骨粗鬆症を疑う(図2)。さらに背部痛や腰痛を自覚、ちょっとしたことで骨折する場合は、すでに骨粗鬆症が進んでいる可能性がある。従って早期に検査を受け診断することが重要になる。

(図2)

病院で行う検査 レントゲン検査で骨折や骨の変形、骨粗鬆症化の有無を調べる。血液や尿検査で骨代謝に関係する成分(骨代謝マーカー)を測定する。骨量測定器を用いて骨密度を測定する。

治療

以下のような治療(薬物療法、運動療法、食事指導など)を行う。

薬物療法:様々な薬が開発され、年齢、性、骨折の有無、痛みの程度などにより薬を選択できるようになった。骨吸収を抑える薬、骨吸収と形成のバランスを整える薬、骨形成を促す薬などがある(図3)。

(図3)

食事:カルシウム、ビタミンD、ビタミンKなどが多く含まれる食品が推奨される。乳製品、小魚、大豆類、緑黄色野菜などを摂取する。最近は、脂肪の少ない赤身の肉(牛肉など)も筋肉の萎縮を防止する観点から摂取が勧められている(図4)。

(図4)

運動療法:運動することにより骨強度が維持改善されることがわかっている。また、筋力やバランス能力の改善により転倒予防効果も得られる。運動は、激しいものではなく、散歩などの有酸素運動と軽い筋力訓練で十分であるが、毎日継続することが重要である。

最近の話題

最近の研究で骨と他の臓器との連関があることがわかり、生活習慣病(糖尿病)、腎疾患(慢性腎不全)、肺疾患(慢性閉塞性肺疾患)によっても骨が弱くなることが分かってきた。そのような病気を治療中の方も適切な治療が必要である。」

展望

日本骨粗鬆症学会が取り組み始めたリエゾンサービスの構築をしていく予定である。このサービスは、骨折の連鎖を予防する目的で各医療機関および多職種が連携するシステムで医療費抑制効果があることもわかっている。

リハビリテーション科 伊藤 友一 (いとう ともかず)

昭和34年生まれ
出身地  福島県
最終学歴 山形大学医学部卒業
職  歴 平成16年4月 済生会山形済生病院入職
資  格 日本整形外科学会[専門医]
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