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健康コラム

第28話 床ずれ(とこずれ)を予防する!

褥瘡管理者  黒木ひとみ
床ずれってなあに?

床ずれ(疾病名=褥瘡:じょくそう)とは、体重の集中する部位の骨と寝具に挟まれた皮膚組織が圧迫され、「血の流れが悪くなり、皮膚やその下にある組織が死んでしまう外傷」を言います。

床ずれの発生には、大きく2つの要因があります。一つは局所的な要因で、加齢による皮膚機能の低下、寝たきりによる摩擦やずれなどがあります。もう一つは全身的な要因で、脳神経系の疾患、栄養状態の悪化、運動能力や知覚の低下などがあります。 床ずれは、表面から見えない皮膚組織のダメージが発生初期には目では確認できないために、時間が経過してから、キズ(創)の状態が急速に悪くなったという印象を受けることがあります。そのため、毎日注意深く皮膚を観察することが大切です。

床ずれの重症度

分類は、皮膚の損傷の深さの程度から4つに分けられます。

  • ステージⅠ:皮膚が一時的に赤みを帯びる、圧迫しても消えない赤みがある。
  • ステージⅡ:表皮剥離(薄皮がめくれた感じ)、水ぶくれ、びらんができている。
  • ステージⅢ:皮膚組織の一部が欠けてなくなり皮下組織にまで及んでしまっている。
  • ステージⅣ:皮膚組織の一部が欠けてなくなり筋肉や骨にまで及んでしまっている。

床ずれは作らないことが一番重要ですが、ステージⅠ~Ⅱの浅い床ずれは適切に治療ができれば比較的治りやすく在宅でも治療は可能です。抗生物質の入った軟膏や肉芽形成促進剤を塗ったり、ドレシング材を使用していきます。 ステージⅢ~Ⅳの深い褥瘡になると治りにくく時間がかかってきます。そのためにはなるべく早期に発見することが大切です。

床ずれはどうしたら予防できるのか?

 床ずれ対策として、床ずれ発生の2大要因を減少させていきましょう。

① 体に加わる圧力の強さを小さくする
② 体の一部に加わる圧力のかかっている時間を少なくする

    • 体に加わる圧力の強さを小さくするには、できるだけ寝具と接地する面積を広くするような工夫が必要です。各素材(ウレタン、エア、ゲル、ウォーターなど)のマットレスに、体が沈み込むことでマットレスと身体との接触面が広くなり、体圧を分散することができます。局所の圧だけをみるのではなく、体重をバランスよく受け、良い寝姿勢を保持することも大切です。
      圧力のかかっている時間を少なくするということは...
    • 圧迫された部位を直接解放することができる「体位変換(体の向きを変える)」が最も有効な手段です。
    • かかとや腕などを少し持ち上げるだけで圧が解放されます。寝具と接着していた部位を動かす(持ち上げる・横に移動する)など細かい体圧分散が効果的です。
    • 圧切り替え型のエアマットレスの使用(身体を保持する空気の筒が一定時間ごとに切り替わり、一部の圧力が継続する時間を少なくできる)。

予防に勝る治療なし!!

健常人はたとえぐっすり寝こんでいても、絶えず体を動かしているので床ずれは生じません。  通常、圧迫が続けば痛みを感じ、無意識にその部位を動かすからです。つまり「知覚」と「運動」という2つの神経機能が働いている限り、床ずれは生じないのです。よく「予防に勝る治療はない」といわれますが、床ずれ(褥瘡)ほどこの言葉の重みを持つ疾患はありません。 介護者には予防や早期発見のために、皮膚の骨が飛び出している部分が赤くなっていないかチェックをしてもらい、もし発見したら、主治医やケアマネージャー、訪問看護師などに相談し対処していきましょう。

黒木 ひとみ(くろき ひとみ)

出身地  山形県尾花沢市
職  歴 1995年 済生会山形済生病院入職
資  格 認定看護師資格取得
     2009年3月 宮城県 皮膚・排泄ケア認定看護師教育
     課程修了
     2009年6月 日本看護協会認定 皮膚・排泄ケア認定
     看護師資格審査に合格
現  職 済生会山形済生病院で褥瘡管理者として専従業務
     を行っている。
     その他、ストーマ外来、創傷管理、スキンケアに
     ついて、院内を横断的に活動しております。
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