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健康コラム

第21話 中高齢者(ちゅうこうれいしゃ)のスポーツ活動について

整形外科 松田雅彦

全国ラージボール卓球大会出場選手の健康アンケート調査から

近年、高齢化社会の進行および国民健康意識の高まりに伴って、中高齢者のスポーツ愛好者が増えてきています。「メタボリックシンドローム」や日本整形外科学会推奨の「ロコモティブシンドローム」などマスコミや学会による啓蒙活動も盛んになっており、御多分にもれず中年肥満となってしまった私も遅ればせながらスポーツによる減量作戦を計画、実践(?)中です。しかし、ただ単にスポーツといっても、ウォーキングやラジオ体操からマラソンやトライアスロンまで幅広い分野にわたり、何を行うか悩んでしまいます。個人が現実的に継続できるのは、①好きなスポーツ、②昔やっていたスポーツ、③身体および金銭的にそれほど負担のかからないスポーツ、④気分的に楽しいスポーツ、⑤一緒にやってくれる人がいるスポーツ、あたりになってくるかと思います。私の場合は②が卓球であり、現在は「ラージボール卓球」を行っています。ラージボール卓球は、台の大きさは同じですが、ボール径が一般競技用より大きくラリーが長く続き楽しめるスポーツであり、中高齢者を中心に年々競技者が増加していて、現在全国で約90万人の愛好者がいるとされています。年1回の全国大会は都道府県持ち回り制なのですが、平成21年度は山形で開催されました。おりしも新型インフルエンザ対策で大会救護班には医師が必要とのことで、私が大会救護委員長に任命され、救護班及び選手として参加してきました。その際に、全国から参加して下さった選手を対象として健康アンケートを行い、中高齢卓球選手のスポーツ活動について調査いたしました。今回は、その大会と調査結果について報告させていただきます。

全国ラージボール卓球山形大会は、平成21年6月24-27日まで天童の県総合運動公園で開催されました。毎年2500名程度の参加がある大会ですが、山形大会も20代から90代までの男女2754名が参加し、男女シングルス、男女ダブルス、混合ダブルスにそれぞれ、年代別に分かれて競技が行われました。硬式卓球で全日本レベルの大会に出場経験のある選手や過去の大会で優勝した選手はAクラス、その他の選手はBクラスに出場することとなります。Aクラスの試合では、昔の名選手も多数参加していて、各年代とも本当にハイレベルな試合が繰り広げられました(数年前には、元世界チャンピオンの小野誠治選手が男子シングルスに参加しましたが、優勝できませんでした)。ラージボール大会なのに、ボールが速くて見えない、回転が全く分からないなど驚きの連続でした。また、大接戦大熱戦が続き、卓球の面白さを再確認してきました。やっぱり、「楽しい」「面白い」は、生涯スポーツの基本だと思います。

また、出場全選手を対象に、運動器障害の有無、個人や協会における予防法などについて健康アンケート調査を行いました。年代が上がるにつれて高い回答率が得られ、60代以上では63%の回答率があり、健康意識の高まりが裏付けられました。有効回答男性372名、女性601名の計973例を検討しました。運動器障害は、60.6%(男性59.5%、女性61.3%)に認められました。つまり、参加選手の約6割が何らかの運動器障害がありながら、大会に出場していたことになります。障害部位は、膝28.0%、腰26.4%、肩18.4%、肘7.2%、足6.6%の順(重複あり)でした。内服薬や外用剤などを使っている例は11.1%認められました。練習日数は週当たり平均2.4日、競技年数は5-10年が最多で全体の58%を占めていました。練習日数や競技年数と運動器障害およびその変化は、相関が認められませんでした。また、高血圧症や高脂血症、糖尿病など運動器疾患以外での服薬は、37.7%に認められました。つまり4割弱の方が運動器疾患以外で通院しながら、卓球を続けていることになります。心臓疾患など重篤な障害がある場合は別ですが、『一病息災』の言葉如く、通院しながらも身体状況に応じてスポーツを行っている方々がこれほど多いとは、本当に驚きでした。動機も「糖尿病といわれ、医者から勧められた」とか「知人に誘われた」など、卓球経験が全くない方々も手軽にラージボール卓球を始め継続していました。「競技を継続していて痛みが軽減し、ラージボール卓球に感謝している」との回答もありました。

一方で、障害の予防法や対策は、ストレッチや準備体操の徹底、装具装着など個人的に行われているのが65%であり、地区や協会における対策は障害保険加入推進など5%程度でした。ほとんど個人任せであり、協会や団体としての対策はあまり行われていないのが現状でした。私もこれまでの大会参加中、事故や急変などで臨時救護班活動を行なった経験があり、健康への過信やオーバーワークが危険であることは感じております。競技大会になってしまうとつい本気になってがんばってしまうのも人の性でありますので、適度なブレーキ役がどこかで必要ではないかと考えます。現在、スポ・レク祭やマスターズ、ねんりんピックなど中高齢者の大会は数多く開かれており、今後は医療側から地区や各種競技協会へのアプローチが必要と痛感しております。

日本整形外科学会の提唱するロコモティブシンドローム対策でもラージボール卓球が注目されています。私は、今後も自分を含む中高齢者の健康維持を目的に活動を続けていく予定です。以前卓球をやったことある方、また卓球は全く経験ない方でも十分楽しめると思われますので、気軽に声をかけてください。大歓迎です!一緒にやってみませんか?

当院には、健康増進センター「めぐみ」が併設されており、大勢の方に利用していただいております。医師による健康診断後、個々人の運動内容が計画されていきます。プール、ジム、体育館があり、各種健康教室も企画されています。是非、一度見学にいらしてください。

松田雅彦 (まつだ まさひこ)

昭和37年生まれ
出身地  山形県
最終学歴 山形大学医学部卒業
職  歴 平成9年4月 済生会山形済生病院入職
現  職 整形外科医長
資  格 日本整形外科学会 専門医
     日本整形外科学会 スポーツ専門医
     日本整形外科学会 運動器リハ専門医
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