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健康コラム

第14話 尿路結石(にょうろけっせき)のはなし

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泌尿器科 大地  宏 医師

尿路結石とは?

尿の中に含まれている物質が結晶をつくり、それが、タンパク質などと結合して固まったものを結石といいます。 尿は腎臓でつくられ、尿管を通って、膀胱にためられ、排尿とともに外に排泄されます。 この尿の通り道を尿路といい、腎臓、尿管、膀胱に結石ができる病気を尿路結石症といいます。腎臓にできれば、腎結石。これが下に落ちてくれば、尿管結石、膀胱に結石ができれば、膀胱結石ということになります。

尿路結石はあなたにもあるかもしれない。

2005年の調査によると、日本の男性は一年間で約500人に一人が新しく尿路結石症に罹患しています。尿路結石症は文明病の一つともいわれ、国民の食生活がよくなるにつれて(欧米型の食生活になるにつれて)増加しています。戦後に急増し、過去40年間で約3倍の頻度になっています。2007年現在、男性の7人に1人が、 女性の15人に1人が一生のうち一度は尿路結石にかかるといわれています。

結石の種類

シュウ酸カルシウム結石、リン酸カルシウム結石、リン酸マグネシウムアンモニウム結石、尿酸結石、シスチン結石が代表的なものです。最初の2種類が圧倒的に多くみられます。 尿が酸性かアルカリ性か(尿のpHで)で結石のでき方が変わります。 酸性の尿では尿酸結石ができやすくなります。アルカリ性の尿ではリン酸カルシウム結石ができやすくなります。

症状は?

疝痛発作といって、急な腰痛、腹痛で発症することが多いです。吐き気がしたり、冷汗を伴い、顔面蒼白となります。ただし、いつも激しい痛みとは限らず、鈍痛や重苦しさだったりすることもあります。 結石が尿路粘膜とこすれて、血尿が出ることがあります。結石が膀胱のほうに下がってくると、残尿感、頻尿など、膀胱炎のような症状となる場合があります。 また、結石の疼痛発作は夏場に多いという報告があります。 尿路結石があって、38.5℃以上の発熱を伴うものは、結石性腎盂腎炎といって、重篤になりやすいので注意が必要です。この場合はなるべく早く医療機関を受診しましょう。

結石の検査

検尿
大抵、尿路結石は尿潜血+で、尿中に赤血球がみられます。

腹部エコー検査(US)
簡便にすぐできる検査です。水腎症の有無の判断、レントゲンに写らない成分の結石(レントゲン陰性石)の診断に有効です。また、被爆させたくない妊婦さんの検査としても有効です。

腹部単純X線撮影(KUB)
レントゲンに写る結石の位置、大きさの判断に有効です。

静脈性腎盂造影(IP)
造影剤を注射して、レントゲン撮影をし、結石の大きさ、数、位置を確認します。また、尿路の閉塞の有無が確認できます。

CT
大がかりな検査ですが、左右の腎臓の状態、結石の位置、数、大きさを把握するために行うことがあります。また、腎盂腎炎合併の有無の検索もできます。

逆行性腎盂造影
上記の検査でどうしても結石と診断できないものが対象となります。尿道から膀胱内視鏡(カメラ)を入れて、腎盂尿管を造影します。

結石分析
自然に排出した結石の成分を分析して、今後の治療、再発予防に役立てます。

治療

保存療法
自然に尿道から結石が排出するのを待ちます。水分を多量にとることで結石の下降を促します。直径5-9mmまでの石は自然に排出する可能性があります。これは、小さい結石の場合有効な方法です。

体外衝撃波結石破砕術(ESWL)
衝撃波を発生する装置=結石破砕機を使って衝撃波を発生し、これを体の中にある結石に集中させ、そのエネルギーで結石を砕きます。破砕された結石は尿とともに排出されます。お腹にメスはいれません。

経尿道的尿管結石砕石術(TUL:内視鏡手術)
尿道から細い内視鏡(カメラ)を挿入して結石を砕きます。この手術もお腹は切開しません。

経皮的腎砕石術(PNL)
背中から腎臓に向かって穴を空けて、内視鏡で腎結石を破砕します。

腎切石術、尿管切石術(開腹手術)
文字通り、お腹を切開して結石を取り出す手術です。現在はあまり行われておりません。

結石の予防は?

尿路結石は再発が多いことで知られています。再発率は5年間で20%、20年間で80%といわれています。ということは、治療が終わっても再発予防の対策を立てなければなりません。次の事柄が一般にいわれています。

①水分補給
尿中のミネラルの濃度を低くし結晶化を避けるために、水分を十分とりましょう。一日あたり食事以外に2000ml(500mlのペットボトルで4本)の飲水が理想的です。汗をかいて尿の量が減る夏場も水分補給するようにしてください。 ただし、アルコールを大量に飲むのは逆効果です。ビールにはプリン体が多いので、尿酸結石の生成を促進するかもしれません。 砂糖を含む清涼飲料水、甘味飲料もよくありません。水道水、麦茶、ほうじ茶が適しています。コーヒー、紅茶も過剰な摂取は避けましょう。

②食事
朝食、昼食は軽めに、夜はしっかり食事をとるというのはダメ。また、夜遅い食事もダメです。就寝中はもっとも結石のできやすい環境になっています。「結石は夜つくられる」ということを覚えておきましょう。結石の予防には、夕食後の水分摂取が良いとされています。また、夕食から就寝までの時間を4時間程度空けることが勧められています。

【十分なカルシウム摂取が必要】

基本的に尿路結石の予防には、十分なカルシウム摂取が必要といわれています。 シュウ酸を多く含む食品(ほうれん草、紅茶、チョコレート、タケノコ、大根)とカルシウムを同時にとると、腸からのシュウ酸の吸収が抑制されて、シュウ酸カルシウム結石を抑制します。野菜、穀物、海草やサバ、サンマ、イワシなどの青魚は尿路結石を抑制するといわれています。また、塩分の取り過ぎも結石生成を促進するとされています。

【肥満との関係】

2005年の全国調査で男性結石患者の40.3%に肥満(BMI>25kg/㎡)がありました。さらに、日本人女性の肥満の割合は減少傾向にあるのに、女性の結石患者では、24.8%が肥満と一般国民より高い肥満率を示していたという報告があります。 また、海外の研究ではBMIの高い肥満の人ほど尿路結石発生のリスクが高いと報告されています。 このように最近、肥満と尿路結石の関連もあるのではないかといわれてきています。

結局は肥満を避けることも目標として、一日三食の規則正しい、バランスの良い食生活を心がけましょう、ということになります。

泌尿器科 大地  宏 医師

職  歴 平成21年 済生会山形済生病院入職
資  格 日本泌尿器科学会 専門医
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