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健康コラム

第10話 膝(ひざ)のはなし

整形外科  福島 重宣   医師

軟骨は若返りますか?

最近、テレビCMなどでサメ軟骨やヒアルロン酸などが膝の症状を和らげるような宣伝がされています。その製品を服用すると今まで大変だった階段昇降がいとも容易くできるようになったと演じられています。膝の痛みをお持ちの方なら一度は試したくなります。

私どもの外来でも膝の痛い方がたくさんおられます。多くの方からこのようなサプリメントの効果について質問されます。 加齢とともに軟骨がすり減って膝の痛みや腫れをきたす病気を変形性膝関節症といいます。早い方だと50歳くらいから症状がではじめます。我慢しすぎてがんばりすぎると軟骨だけではなく骨もすり減りO脚がひどくなってきます。

特徴的な初発症状は動き始めの痛みや階段昇降時の痛みです。また膝に水がたまり正座ができなくなったなどの症状で病院にこられる方もおられます。 本当の原因は不明ですが、年齢とともに増加し60歳をこえると40%程度の方に発症してくるようなので加齢も原因の一つと考えられます。最近の研究では複数の遺伝子が発症に関与しているといわれます。

サメ軟骨といわれているものはコンドロイチン硫酸のことですが、似たようなサプリメントにはグルコサミン、ヒアルロン酸があります。このようなサプリメントは抗炎症作用があるといわれていますので、たしかに変形性膝関節症の炎症をやわらげ痛みを抑える効果はあるかもしれません。

しかしすり減った軟骨を再生する効果はないかと考えられます。 若返りの薬がこの世にないことは皆さんご存知のことと思います。では軟骨を若返らせる薬はあるでしょうか?残念ながらありません。 軟骨がすり減り始めると負担がかかればかかるほど軟骨はすり減っていきます。では動かさないでいるとよいかといいますとそうでもありません。軟骨の栄養は関節の中にある関節液から栄養されますので、適度な刺激や運動が必要です。 変形性膝関節症の治療は初期であれば、日常生活のなかで膝の使い方に注意してもらいます。

階段昇降や坂道は膝への負担が3~5倍くらいになりますので避けた方がよいかと思います。正座をがんばりすぎるのもよくありません。お葬式への出席の後症状が増悪され来院される方も多いです。適度に平地を歩かれることも悪くはありませんが20-30分くらいが望ましいかと思います。ダイエットや糖尿病でさらなるカロリー消費が必要な方はプールでの水中歩行がよいかと思います。

立ち仕事の多い方には靴の中敷が工夫されている足底板を装具屋さんに処方し装着していただいています。もっと運動されたい方にはストックを2本ついて歩くノルディックウォーキングを指導しています。私たちの研究では膝にかかる負担は30%位減少するようです。痛いときには対処療法ですが湿布や痛み止めを処方しています。 先ほども書きましたが、軟骨を若返らす方法はありません。軟骨が摩耗し始めたらできるだけ摩耗させないよう上手につきあっていくしかありません。

症状や軟骨のすり減りが進んだ方には、比較的若い方には骨きり術、それ以上の方には人工膝関節置換術を行っています。当院では昨年度およそ200件の人工膝関節置換術を行いました。比較的確実に痛みがとれる方法です。以前より長期成績や関節の動きも改善してきております。最近では出来るだけ手術創を短くし、侵襲をおさえた低侵襲手術(MISTKA)も行っています。 若い方でも膝の軟骨が問題になる場合があります。

スポーツ外傷で半月板や靭帯損傷を放置すると軟骨を損傷することがあります。若い方でも軟骨はもとには戻りません。そうならないよう半月板を縫合したり、靭帯を再建しなければならい場合もあります。わからない場合、困ったときには整形外科にご相談ください。

福島 重宣   医師

昭和35年生まれ
出身地  北海道
最終学歴 山形大学 医学部卒業
職  歴 平成17年 済生会山形済生病院入職
資  格 日本整形外科学会 専門医
所属学会・専門分野