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健康コラム

第9話 麻疹(ましん)について

小児科  赤羽 和博 医師
麻疹について

世界中ではその感染力と合併症の高さで多くの死亡者を出している麻疹ですが、日本では表のように減少傾向にあった為、やや過去の病気のように思われていました。しかし、2007年に流行し大学や高校が一時閉鎖されたり、2008年も関東を中心に小流行するなど、皆さんにまたその存在を認識させています。近年、先進国の多くでは麻疹予防接種が複数回行われるようになり、徹底した排除の方針がとられています。しかし、日本では撲滅への動きが鈍く、これらの国々から「麻疹の輸出国」という有り難く無い称号を付けられることまであります。今回の騒ぎに伴い、国がどのような動きを見せているかを含め麻疹、特に予防接種について書いてみたいと思います。

麻疹の病状

麻疹は麻疹ウイルスの空気感染や飛沫、接触感染により起こります。空気感染と言う事はそんなに近づかなくても同じ空気を吸うだけで移る可能性があり、未感染の人や予防接種をしていない人の間では急速に拡がることになります。感染後10日程の潜伏期を経て発熱、咳、鼻水、そして赤い発疹が出ます。特徴的なのは典型例では3-4日すると一時熱が下がったようになる事と、発疹出現前後に口の中の頬の粘膜に白班(コプリック斑)が出る事で、特にコプリック斑は医師にとって診断価値の高いものになります。熱が再上昇し、高熱となり、顔や首に赤い発疹が出現し体中に拡がります。そして発疹同志が融合して直っていきます。発症数日前から発症後1週間は感染源になると考えられています。

医学の進んだ現在ですが、麻疹に対する有効な治療法はありません。また、合併症が多く死亡の頻度も高く怖い病気です。感染すると30%の人で肺炎、中耳炎などが起こり、1000人に1人では急性の脳炎を起こし、同じくらいの比率で死亡者が出るとされています。また、その時は改善しても数年から十数年後に亜急性の脳炎を起こす事も稀にあります。衛生状態の不十分な発展途上国では数十人に1人の割合で死亡者が出るとも言われています。抵抗力の弱い子供だけで無く大人にとっても重要な病気で、日本では以前の予防接種率が十分で無く、特に若年層では(30歳ぐらいまでの年代)MMRワクチン(麻疹+おたふく+風疹の予防接種)などの副作用で麻疹ワクチンを手控えた時期があったため、かかりやすい人が相当数いると考えられます。

麻疹の予防接種

我が国では1966年から麻疹ワクチンが認可され、使用されてきました。麻疹の予防接種の副作用には元々発熱がありましたが、最近は改良され発熱率は20%を切るようになってます。ワクチン接種後、数日~2週間位で発熱が見られるのですが、高熱になる人は数%でその人達でも大抵1~3日で下がります。自然経過の重症度に比べればかなり軽いと考えられます。また、ワクチンをしたのに効果が十分で無い人も5-7%いると言われています。体質の問題であったり、時間経過で効果が薄れてしまう問題もあるようです。

しかし、そのような人が最初から分かる訳ではありませんし、また、反応不十分の人はどのような予防接種でも必ずいますので、一回で無く複数回接種する事も意味がある訳です。これ迄我が国では乳児期一回接種が基本でしたが、世界の公衆衛生の流れにならい、2006年から改良されたMRワクチン(麻疹と風疹の両方に効果を持つワクチン)が用いられて、1歳過ぎて早期と小学校入学前の2回接種が行われるようになりました。根本的に本邦で麻疹を無くすには1歳過ぎと小学校入学前の2回接種を行うこと、予防接種率95%を達成し、これを維持すること、若年層の麻疹にかかる可能性を減らす事にあるとされています。厚生労働省はこの為に、若年の中学生、高校生にも予防接種を行う方針を立て、平成20年4月から24年度の5年間に再度中学1年生と高校3年生に接種を行うことが決定しました。該当する児の御家庭には市町村から前年度末に連絡が入る事になっています。自分の身を守り、また社会の健康を守る事にもなりますので、忘れずに受けるように保護者の方が指導してあげて下さい。

最後に

小児に対する予防接種が義務から勧奨になり、摂取率が低下して社会全体に与える影響が懸念されていましたが、とりわけ麻疹、結核などは蔓延すると余計な医療費を使うなど社会全体の負担が増える事になります。麻疹に関してはその恐ろしさを皆さんが認識し、多少の副作用はあるものの予防接種の複数回接種が有効なことを理解して接種に努めるようにお願いします。 慢性胃炎がない場合は胃癌発生の危険が慢性胃炎のある方よりもだいぶ低くなるので2年に一回程度の検査でいいと思われます。慢性胃炎の程度は、胃カメラ検査をした際、担当医師に積極的に聞いてみてください。

赤羽 和博 医師

昭和37年生まれ
出身地  群馬県
最終学歴 山形大学 医学部卒業
職  歴 平成15年 済生会山形済生病院入職
資  格 日本小児科学会 小児科専門医
     日本周産期・新生児医学会 暫定指導医
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