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健康コラム

第6話 乳癌(にゅうがん)について

外科  太田 圭治 医師
乳癌の現状

欧米に比して日本はまだ少ないが乳癌が急増しています。年間約3万人の女性が乳癌に罹患し、約1万人近くの女性が乳癌で亡くなっているのが現状です。

欧米では、一生涯に女性の8人に1人が、日本では、22人に1人が乳癌にかかると言われています。1994年に胃癌と同率で第一位となり、1995年より女性の癌の第一位となっています。死亡率は、胃癌、大腸癌、肺癌に次いで第4位です。年齢別にみると、35歳くらいより急激に増加し、40歳代と60歳代にピークを認めます。乳腺の病気(しこり)をみると、年齢が高くなるにつれて乳癌の可能性が高くなります。20歳代は、良性の線維腺腫が多く、40~50歳代になると乳腺症とともに乳癌が大半を占め、高齢者の乳房のしこりは殆どが乳癌です。

アメリカやイギリスでは、乳癌による死亡率が低下していますが、日本では、乳癌による死亡率が徐々に高くなっています。その差は、検診受診率に起因しています。欧米では、70~80%の高い受診率であるのに比して、日本はまだまだ低いため、早期乳癌の比率が低く乳癌による死亡率の低下につながらないのです。

平成12年より乳癌検診にマンモグラフィが導入され、マンモグラフィ・視触診併用検診により乳癌発見率が向上しております。触知しない早期乳癌も発見されるようになっています。

乳癌の診断

乳癌の診断の基本は視触診です。乳房のしこりが主な症状ですが、他に生理の周期で治まらない徐々に強くなる痛みや乳頭分泌とくに血液混じりには注意が必要です。進行すると皮膚やリンパ節などに異常が出て来ます。視触診だけでの発見は不十分ですが、大きさ、形、かたさ、動きやすいかどうかなど重要な情報が得られます。

そして様々な画像診断を行ないます。マンモグラフィで分かるのは8~9割です。しこりの影や石灰化として見つかります。明らかに癌のしこりとして写るものからぼんやりとした影としてみえるものまであります。乳管内に癌が留まる早期の癌(非浸潤癌)では、石灰化のみが唯一の兆候である場合もあり、マンモグラフィが非常に有用です。若い女性の場合は乳房に隠れてわかりにくいこともあり、超音波検査(エコー)が有用です。

超音波検査はしこりをつくるタイプの癌発見には優れています。良性か悪性を判断するために、針を刺して細胞をとって診断(穿刺細胞診)します。判定が難しい場合には、少し太めの針で組織をとって調べる(穿刺組織診)こともあります。それでも診断がつかない場合には、局所麻酔をしてしこりを摘出して診断(切開生検)します。

マンモグラフィやエコーで診断が難しい場合、しこりの性格診断のため、MRIをおこなって、同時に癌の拡がりもチェックします。乳癌の診断がつけば、リンパ節転移や肺、肝臓などへの遠隔転移がないかCT検査で調べます。骨への転移が疑われる場合には骨シンチを施行します。 新しい検査として当院に導入されたPET/CTがあります。いっぺんに全身をチェックして、リンパ節転移や遠隔転移の有無がわかります。

乳癌の治療

乳癌は、全身病と考えられています。乳癌の治療は、手術、抗癌剤、ホルモン療法(薬物療法)、放射線療法を組み合わせて行ないます。治療の基本は手術です。以前は乳癌と分かると、乳房をすべて切除する乳房切除術が主流でした。1986年より乳房温存手術が導入され、徐々に手術の縮小化が進み、現在では乳房温存手術が上回りました。大きなしこりでも抗癌剤で小さくして温存手術が可能になることもあります。手術で取り切れても再発予防のため、各種治療を合わせて行なうことが必要です。

乳癌検診

80~90%が自己発見であり、検診でみつかる乳癌の比率は少ないのですが、自己検診や乳癌検診で見つかる乳癌は早期が多く、偶然見つかった乳癌は、進行癌が多いのです。視触診だけの乳癌発見率は約0.1%、マンモグラフィ併用検診での発見率は、0.2%以上です。検診での発見乳癌が増えると、早期乳癌の割合が増えて乳癌による死亡率の低下につながります。早期に発見し治療すれば、長期生存が可能であり、そして小さく切除するだけで乳房を守ることもできる訳です。

山形県は、県内で講習会を開催し、資格をもつ医師や放射線技師の数は全国でも上位に位置しており、検診受診率も約30%と全国でもトップクラスですが、50%更には70%とアップして死亡率の低下につながるよう願っております。乳癌検診を受けると同時に、できれば毎月1回自己検診もしましょう。 乳癌撲滅運動として、各地でピンクリボン運動が展開されており、山形でも毎年開催されています。 奮ってご参加ください。

太田 圭治 医師

昭和33年生まれ
出身地  栃木県宇都宮市
最終学歴 山形大学大学院 医学研究科卒業
職  歴 平成4年 済生会山形済生病院入職
資  格 日本外科学会 外科専門医
     日本消化器外科学会 認定医
     日本乳癌学会 認定医
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