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健康コラム

第2話 PET/CT

放射線科  渡邉 順久 医師

山形済生病院PET/CTセンターという施設があるのをご存じでしょうか? 病院本館に棟続きで、北西の端にある総二階建ての施設です。

今回はこのPET/CTセンターに導入された最新の医療器械であるPET/CTについて説明いたします。

  1. PET/CTとは
    PET(陽電子放出断層撮影:Positron Emission Tomography)とCT(Computed Tomography)が合わさった機械です。 PETとは、サイクロトロンで作った陽電子を出す放射性同位元素に様々な薬を合わせて、注射し、体の中の代謝をみる検査です。体の中に入ったお薬からはγ線という電波が出ます。その電波をPET装置で受信し、画像化するのがPET装置です。 当院のPET/CT センターで行っている検査では、ブドウ糖代謝をみる18F-FDGという薬を院内で製剤し、使用しています。 癌細胞は、通常の細胞より5から10数倍もブドウ糖代謝が亢進しています。当院で使用している18F-FDGというお薬が、強く集まった場所に癌がある可能性が高いということになります。 しかし、PET検査だけでは、お薬の集まった場所の正確な位置が分かりづらいという欠点がありました。それを画期的に改善したのがPET/CTです。 PET/CTでは、PETとCTを一つの検査として行います。PETの画像とCTの画像は、同じ位置の情報を持っています。そのため、お薬の集まった画像をCTの画像に重ね合わせることができます。 このことにより、お薬の集まった場所の正確な部位を判断でき、より精度の高い診断をすることが可能になりました。

    図2.PET 画像:お薬の集まりの正確な位置はわかりづらい。

    図3.PET/CT 融合画像:お薬の集まりが、左の脇の下の リンパ節への転移であることが明瞭となります。

    ET/CTでは注射のあと、1時間安静にしていただいた後、約30分の検査で、ほぼ全身の検査を行うことができます

  2. PET/CTの保険適応
    現在、転移性肝癌、肺癌、乳癌、大腸癌、頭頚部癌、膵癌、悪性リンパ腫、原発不明癌、悪性黒色腫、食道癌、子宮癌、卵巣癌の12種類の癌に保険の適応が認められています。しかし、適応に制限があります。また、これら以外の癌には保険適応は認められておらず、自由診療(自費診療)となります。

  3. PET/CTの得意な癌,不得意な癌
    PET/CTは非常に優れた診断機器ですが万能ではありません。ブドウ糖の代謝が非常に亢進している癌であれば、5㎜位の癌でも見つけることが可能なことがありますが、逆にブドウ糖代謝の亢進していない癌や癌細胞の中に粘液が多く含まれるような特殊な癌では、数㎝の大きさがあっても捕まえることができないことがあります。また胃の早期癌の様に、粘膜に非常に薄く存在するような癌を捕まえることはできません。 肺癌の中の高分化腺癌や肺胞上皮癌といった癌もPET装置のみでは捕まえることができませんが、PET/CTではCT検査も必ず行われるのでCT画像の方でこれらの癌の診断をすることが可能です。
    図 4.PET装置のみではわからない肺癌も、 CT画像で捕まえることができます。

  4. PET/CTを用いたガン検診
    日本のPETあるいはPET/CTを持っている様々な施設でPETあるいはPET/CTを用いたガン検診が行われており、注目されています。PETを用いた検診の場合、100人に1人の割合でガンが検出されています。当センターでも開設当初より検診を行っており、やはり100人に1人程度の受診者の方にガンが見つかっています。  しかし、先程も書きましたようにPET/CTは、決して万能の機械ではありません。日本、特に東北で罹患率の高い胃癌の早期のものは内視鏡(胃カメラ)でなければ分からないなど、PET/CTのみで全てのガンを捕まえることは不可能です。そこで、ガン検診としてPET/CTを中心とし、血液検査(腫瘍マーカー含む)や内視鏡検査、MRI検査、超音波検査、マンモグラフィーなどを組み合わせた、総合ガン検診のコースを用意しております。定期的に胃内視鏡検査を含む健診を受けられている方には、PET/CTのみの検診を、定期健康診断を受けられていない方には総合ガン検診をおすすめしています。
    詳しくは、PET/CTセンターにお問い合わせ下さい。
    (TEL023-682-1112  PET/CTセンター直通)
渡邉 順久 医師

昭和39年生まれ
出身地  山形県山形市
最終学歴 山形大学医学部卒業
職  歴 平成7年 済生会山形済生病院入職
資  格 日本医学放射線学会専門医
     日本インターベンショナルラジオロジー学会指導医
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