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健康コラム

第1話 メタボリックシンドロームってなに?~内臓脂肪型肥満(ないぞうしぼうがたひまん)とは~

糖尿病内分泌科  杉山 和彦 医師

ドックや検診で、生活習慣病である肥満や糖尿病、高血圧、高脂血症を複数指摘されることが少なくありませんが、これらは独立した別の病気ではなく、内臓脂肪型肥満が原因でおこるメタボリックシンドロームといわれる病態であることがわかってきました。

今回は、

  1. 内臓脂肪型肥満とは何か
  2. メタボリックシンドロームとは何か
  3. メタボリックシンドロームはなぜ悪いのか
  4. メタボリックシンドロームの治療

について述べたいと思います。 メタボリックシンドロームの本体は、内臓脂肪の蓄積ですから、内臓脂肪を少しでも減らすことが重要です。そのことにより、将来発症しうる心血管系疾患を予防することが可能になるのです。内臓脂肪を減らす基本は運動療法、食事療法です。

内臓脂肪は、燃焼しやすいため、日々の適切な運動によって、内臓脂肪を減らすことが可能です。運動療法は、善玉のアディポネクチンも増やします。また、血糖や血圧、中性脂肪を低下させます。運動療法のポイントとしては、歩行、サイクリングなどの有酸素運動を息切れせずに汗ばむくらいの強さで、一回30分以上で週三回以上行うことです。万歩計をつけ、一日一万歩を目指します。当院の「めぐみ」(運動療法をおこなう施設)でも、内臓脂肪を解消する運動をすることができます。

食事療法は、過食や食生活の乱れに伴う内臓脂肪の蓄積を是正するために行います。一日三食、規則正しい食事を、腹八分目で、ゆっくりよくかんですることが肝要です。また、女性ではお菓子、果物の間食を控えること、男性ではアルコールを控えることは、血糖や中性脂肪を上げないためにも大切です。当院外来では、管理栄養士による「栄養相談」を受けることもできますので、担当の先生にご相談ください。

いずれにしても、ウエスト周囲径をまめに測って、「内臓脂肪の蓄積」を意識し、1cmでも減らすことから始めましょう

  1. 内臓脂肪型肥満とはなにか
    肥満には2つのタイプがあります。一つは、下腹部、腰回りお尻などの皮下に脂肪が蓄積する皮下脂肪型肥満です。洋なし型肥満ともいわれます。もうひとつが、内臓のまわりに脂肪が蓄積した内臓脂肪型肥満です。リンゴ型肥満といわれます。 内臓脂肪と皮下脂肪の違いは、内臓脂肪はたまりやすいが、治療でへりやすい、皮下脂肪はたまりにくいが、治療で減りにくいということです。内臓脂肪は普通預金、皮下脂肪は定期預金に例えられます。内臓脂肪は、遺伝要因、過栄養、運動不足、ストレス、アルコール過剰、喫煙、閉経などの様々な要因で蓄積していきます。 脂肪細胞は、ただ脂肪をためている貯蔵庫ではなく、「アディポサイトカイン」というホルモンが分泌されており、動脈硬化に関係していることが最近明らかになってきました。アディポサイトカインには善玉と悪玉があります。善玉アディポサイトカインはアディポネクチンといい、悪玉アディポサイトカインはPAI-1、TNF-α、レプチンなどがあります。 内臓脂肪が過剰に蓄積していない標準体型では、脂肪細胞からアディポネクチンが多く分泌され、傷ついた血管を修復しています。内臓脂肪の蓄積は、アディポネクチンの分泌を減らし、悪玉のアディポサイトカインの分泌を増やしてしまい、動脈硬化の進行が加速してしまいます。結果として、脳卒中や狭心症、心筋梗塞といった心血管系疾患が起きやすくなります。
  2. メタボリックシンドロームとは何か
    内臓脂肪蓄積に加え、中性脂肪高値、高血圧、糖尿病のうち2項目以上に該当するのが、メタボリックシンドロームです。内臓脂肪の蓄積は、ウエスト周囲径で判定します。具体的には、立位で息を吐いた後に、へそのまわりを測ります。男性で85cm以上、女性で90cm以上は内臓脂肪蓄積と判定します。女性の場合、胴の一番細いところを測りがちですが、へそのまわりを測ることが大切です。当院糖尿病外来では、男性で10~20%、女性では5~10%がメタボリックシンドロームに該当するようです。
  3. メタボリックシンドロームはなぜ悪いのか
    現在、日本人の死因の第一位は悪性新生物ですが、脳卒中や狭心症、心筋梗塞といった心血管系疾患で亡くなる人も約30%で悪性新生物に匹敵する数となっています。また、脳血管疾患はいわゆる「寝たきり」の原因の3割以上を占め第一位です。メタボリックシンドロームの患者では、このような心血管系疾患の危険度が1.8倍も高くなることが、研究の結果わかってきました。つまり、メタボリックシンドロームは、日本人の死亡や寝たきりを引き起こす陰の主役のひとつになっていると考えられます。メタボリックシンドロームと診断されたら、そのまま放置せず、医療機関で管理、指導、治療を受けることが、心血管系疾患の予防に大切です。
杉山 和彦 医師

昭和36年生まれ
出身地  山形県
最終学歴 昭和62年 山形大学医学部卒業
職  歴 平成9年 済生会山形済生病院入職
資  格 日本内科学会 認定内科医
     日本糖尿病学会 糖尿病専門医・研修指導医
     日本内分泌学会 内分泌代謝科特例指導医
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