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健康コラム

第23話 院内感染対策(いんないかんせんたいさく)について

感染管理認定看護師  高橋 睦
認定看護師とは?

特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を用いて、水準の高い看護実践ができ、看護現場における看護ケアの広がりと質の向上を目的に発足した資格認定制度です。認定看護師は、一定の研修を受けた後に看護協会認定審査に合格し、特定の分野において個人、家族および集団に対して水準の高い看護の実践・指導・相談の3 つの役割を担っております。当院では現在6人の認定看護師が各専門分野で活動しております。

感染管理認定看護師とは?

現在全国で1613 名、山形県内では14名の感染管理認定看護師が在籍しております。感染管理認定看護師の役割は、患者さん、来訪者および病院職員等、病院に関わるすべての人を感染から守ることです。感染管理認定看護師は、感染に対するリスクを最小限に抑えるために専門的な知識・技術を用いて、効果的な感染管理を計画、実践、評価し、提供するサービスの質の向上を図るといった重要な責任があります。

次に院内感染対策について説明いたします。

院内感染はどうして起きるのでしょうか?

病院や医療機関は病気を治療する施設ですが、その反面、様々な微生物に感染した患者さんが集まってくる場所です。また治療のために使用する抗菌薬の種類も多く、薬剤耐性の微生物が発生しやすい環境でもあります。院内には、重症の患者さんや手術等で感染の危険性が高くなった患者さん、治療のために免疫抑制剤の投与を受けて人為的に感染防御能(免疫力)が低下した患者さんなど、微生物の感染に対する抵抗力が著しく低い、易感染宿主(健康な人には害を及ぼさない程度の弱毒菌によっても感染を起こす)が多くいます。そのため通常なら免疫力・抵抗力で退治できる弱毒菌による感染の危険性も高くなります。このように、病院や医療機関では、感染源である患者さんと免疫力・抵抗力・体力の衰えた患者さんが、同一施設内にいるため感染しやすい状況にあります。患者さんから患者さんへと直接感染する以外にも、医師や看護師、その他の医療従事者が微生物の運び役になっている場合や、院外から免疫力の高い保菌者の来院によって感染が引き起こされる場合もあります。

どのような経路で感染するのでしょうか?

主な感染経路として、接触感染・飛沫感染・空気感染があります。接触感染とは、保菌者の皮膚や粘膜、排泄物などに直接触れたり、食器や衣類などに間接的に触れる事で感染してしまうことです。対象となる微生物として、MRSAなどの薬剤耐性菌、腸管出血性大腸菌、クロストリジュウムディフシール、ノロウイルス・ロタウイルスなどがあげられます。飛沫感染とは、保菌者のくしゃみや咳などで飛ばされたしぶき等で運ばれた微生物を吸い込むことで感染することです。対象となる微生物として、インフルエンザウイルス、風疹ウイルス、マイコプラズマ、溶血性連鎖球菌などがあります。 空気感染とは、空気中に浮遊する微生物を吸い込むことで感染することです。対象となる微生物として、結核菌、水痘・麻疹ウイルスなどがあります。

どうしたら予防できますか?

微生物は肉眼で見えないため、院内感染を100%予防するのはなかなか難しいことです。しかし微生物によって感染経路がわかりますので、その経路を遮断すればある程度は予防する事が可能となります。

具体的にはどのようなことをすればよいのでしょうか?

まず感染症を発症してしまった患者さんは他の患者さんと接する機会を減らすために個室に入院していただくこともあります。特に空気感染で発症する感染症患者さんは可能な限り換気をよくした個室に移動していただくことが必要となります。インフルエンザなどの飛沫感染対策を必要とする場合は、室内のカーテンを利用したりします。 また感染防止対策の基本は、手指衛生であり、アルコール製剤を用いた手指消毒や流水下での石けんを用いた手洗いが基本となります。特に病室の入退室時、患者さんと接触する前後には、充分に手指消毒を行います。さらに使い捨てのサージカルマスク・手袋・エプロン等を着用して患者さんと直に接しないようにします。患者さんに使用するケア用品はその患者さん専用にして、別の患者さんには使用しないようにします。近年では、薬剤耐性菌を保菌した状態で入院される患者さんもいますのでその対策も重要となります。院内感染は、各診療科を超えて全診療科を含めた病院全体にわたるため、病院内のすべての部門が一致協力して、横断的に連携しなければなりません。そのためにはICTが中心となって感染管理を実践することが必須です。このことは単に一病院の問題にとどまらず、地域全体の問題として地域医療機関全体が一致協力して感染管理を行なっていくことが重要となります。そのため厚生労働省は院内感染対策の推進を目指し、平成24年度から感染対策防止加算を新設しました。

ICTとは?

ICTとはインフェクションコントロールチーム(Infection Control Team)の略称で、院内で起こるさまざま感染症から患者様や職員の安全を守るために活動を行う組織です。医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、事務などさまざまな職種が集まり、横断的に病院全体の感染対策活動に従事しています。病院長が委員長である院内感染対策委員会の実働部隊として、週1回ICTミーティングを開催し、院内ラウンド報告や協議を行っています。

感染防止対策加算とは?

院内における感染防止対策の評価を充実させ、感染症に対する医療機関および連携を通しての地域防御の必要性があるとの考えのもとに感染防止対策加算は実施されています。これは感染防止の資格や豊富な経験を持つ医療職(医師・看護師・薬剤師・臨床検査技師)で構成されたICTは日常的に院内感染防止の取り組みを進め、他病院とも連携しているかを評価します。具体的には、感染防止対策の取り組みの相互評価を、山形市立病院済生館と行っております。また、地域全体の問題として地域医療機関が一致協力して感染管理を行なっていくことが重要であるため、山形市内の5つの病院と連携させていただき定期的に感染対策についての話し合いを行っております。

感染を防止するために!

済生会山形済生病院では、感染防止のためにさまざまな対策をしています。

  1. 手指衛生の徹底
  2. 防護具の着用(マスク、手袋、エプロン等)
  3. 環境整備
  4. 医療器具や機器の洗浄・消毒・滅菌
  5. 院内の感染症発生状況の把握
  6. 職員への感染防止教育

これらはほんの一部ですが、院内で働く者すべてが安全で質の高いサービスを提供する ことを常に心がけています。 最後にICTからのお願いです。

インフルエンザのシーズンを迎えました。 例年ピークは1月から3月になります。そこで、インフルエンザの流行を防ぐためにもせきエチケットにご協力下さい。

せきエチケットとは

インフルエンザのせきやくしゃみなどで、空気中に飛ばされた飛沫を吸い込むことにより感染を引き起こします。1回のせきやくしゃみで体外に放出されるウイルスは1万~100万個とも言われており、飛沫の届く範囲も1~2mに及ぶとされています。 待合室には他の患者様もおられますので、咳やくしゃみなどの呼吸器感染症症状がある方は、インフルエンザを防止するためにマスクを着用しましょう。

他には...

  • せきやくしゃみを時はティッシュなどで鼻や口を覆うこと
  • 呼吸器分泌液を封じ込めるためにティッシュを使用し、ティッシュは最寄のゴミ箱に廃棄する
  • 呼吸器分泌物やそれで汚染されたものに接触した後は、手指衛生を実行すること (ティッシュを通り抜けたウイルスが手に付いています)
  • 呼吸器感染症症状のある患者を診療するスタッフもマスク(飛沫感染予防用)を着用する

せきエチケットは、患者さん・ご面会者の方のみならず、医師・看護師・その他の職員・訪問業者など、 医療機関内に立ち入るすべての人が呼吸器症状を有する場合に遵守するべきものです。ご協力をお願いいたします。  

高橋 睦(たかはし むつみ)

最終学歴 2009年3月 東京都看護協会 感染管理認定
           看護師教育課程卒業
     2009年6月 日本看護協会認定看護師審査に合格
現  職 済生会山形済生病院ICT(感染制御チーム)として
     専従で感染管理を担当
資  格 認定看護師資格取得

私は、2009 年6 月に日本看護協会「感染管理認定看護師」の資格を取得し、2010年4 月からは感染管理業務を専従とし、院内を横断的に活動しております。